hatao

ケルト&北欧の笛奏者、音楽教師、音楽教材著者、楽器店経営者。 ハープと笛のhttp://hataonami.com、ケルトの笛屋さんhttp://celtnofue.com 演奏、教育、普及で音楽を広める。18年京都烏丸錦に、19年東京都ひばりヶ丘に日本初ケルト音楽専門の楽器店を開店。En한中 3か国語学習中。

人生に退屈したくないなら、挑戦しよう

こんにちは! ケルトの笛奏者で、ケルト音楽専門の楽器店「ケルトの笛屋さん」を経営しているhataoです。この連載では、スモールビジネスを営む私が起業やビジネスについてアイデアと経験をみなさんとシェアしています。

新年明けましておめでとうございます。大変な災害や事故でお正月気分どころではない新年となりました。本誌Brewを運営している菊水酒造も被災地に近い新潟の酒造メーカーですので、他人事とは思えず心を寄せております。

さて、今回は新しい年の私の新たな挑戦を紹介いたします。私は今40代ですが、好奇心がいっぱいです。今後もどんどん新しいことを学び、挑戦したいと考えています。今回はそんな中年世代を触発できればと思い書いています。

私はアイルランドなどケルト音楽の管楽器演奏家として20年以上音楽活動を行なってきました。今年2024年は、音楽家としての「表現力」を深め追求するために、さまざまな異なるジャンルの管楽器を、その道の先生について学ぶ一年と定めました。

笛修行の一年

私はもともと聴くのも演奏するのも笛が大好きで、さまざまな楽器に手を出してきました。すべてがプロレベルに演奏できるわけではありませんが、さまざまな笛や音楽ジャンルに横断的に触れた経験から、笛という楽器に共通する真理があるのではないかという感触を持っています。

おそらく読者は笛や音楽と無関係な方ばかりでしょうから、他の喩えをいいますと、世界にはさまざまな格闘技がありますが、種類は異なっても肉体を使い、技術を磨き、強さを目指す点では同じです。料理にも様々なジャンルがありますが、食材を使いより美味しく作ることを目指す点では同じです。逆に言えば、何が「強さ」や「美味しさ」なのかといった価値観や、使える道具、技術、ルールなどは全て異なります。

笛と音楽も、楽器や演奏技術はそれぞれ異なるのですが、人間が演奏しており、管楽器という物理を扱っているため、共通することは数多くあります。

これまでも異なるジャンルの笛吹きと共演やお話しをしたことがありましたが、分かり合える部分はとても多いのです。そこで、様々な笛と音楽を学ぶことで、多面的にこの笛という楽器を理解できないかという異例の試みをしたいのです。私は、その様々な笛を操る万能なプロになろうというわけではありません。この一年を通じて、「表現力」について深めていきたいと思っています。

そこで笛修行の師匠募集をこちらのnoteにまとめて、募集しました。

興味のある方はご一読ください。
「笛の短期集中レッスンの師匠募集」

https://t.co/9JCOp3CEhY

簡単にまとめると、5日間毎日集中レッスンを受けるというものです。Noteを読んで自薦くださった演奏家や、私からお願いした方を含めてすでにインド音楽の竹笛バンスリー、南米アンデスの笛ケーナ、クラシック・フルートの3名の方が決まりました。

年末にケーナを購入、正月休みに猛特訓

「コンドルは飛んでゆく」という曲で知られる南米アンデス地域のケーナという縦笛があります。主に竹や木で作られており、指遣いは私が演奏するケルトの笛「ティン・ホイッスル」とそっくりです。

実は私は大学生の頃にケーナと出会い、熱心に練習をし、演奏活動もしていました。ちょうど同時期にケルト音楽とも出会い、結局はケーナをきっぱり辞めてケルト音楽の方面に進んだのです。同時演奏していたケーナは人に譲ったかと思いますが、よく覚えていません。

今回25年ぶりくらいに自分のケーナを手に入れて練習を再開し始めました。私はアンデス音楽シーンからすっかり離れてしまったので25年ぶりに戻ってきて浦島太郎状態。四半世紀も経つと、演奏者の顔ぶれも随分と変わり、様々な教材やCDが新たに発売されていることを知りました。以前はCDや楽譜を買うのも難しかったのに、今ではAmazonで楽譜を買いSpotifyで参考音源を探すことができます。練習をするのにとても良い時代になったものです。そして学生時代とは異なり、今は最高の楽器や教材を買って、最高のレッスンを受ける経済的な余裕もあります。

岩川光さん製作の高級な木製のケーナ

この年末年始の帰省ではこの楽器と教材を実家に持ち帰り、毎日何時間も練習をしました。最初はフルートと異なる笛に苦労しましたが、すぐに昔の感覚を取り戻すことができました。

山下Topo洋平さんの曲集

驚いたのは、学生時代には音楽のことをほとんど知らず、何も考えずに耳で覚えて演奏していたのに、フルートで音楽や管楽器の基礎を身につけていたため、昔とは異なる次元から練習を初められたことです。やはり、私の推測は当たっていると確信しました。楽器やジャンルは異なっても、その知識や経験を活かすことができるのです。「和食の板前は洋食でも中華でも作れる」とは、私が昔アルバイトしていた和食レストランの板前さんの言葉です。

もちろん、様々な異なる点もあるため、舐めてかかってはいけません。その音楽になるように、体の使い方、音楽の捉え方を客観視して使い分ける必要があります。

それにしても私は笛が本当に好きなのだと思いました。将棋の羽生氏は趣味でオセロを嗜まれるそうですが、私にとっても、ケーナはオセロのようなのかもしれません。

洋裁にも挑戦、笛ケースを作る

もう一つの挑戦は、洋裁です。母は洋裁学校を卒業して生徒を取っていた洋裁のプロで、私が子供の頃は自宅に生徒がやってきて洋裁を習っていたことを覚えています。そんな母のミシンや洋裁技術をいつか受け継ぎたいと思っていたのです。挑戦するなら、私も母も少しでも若いときが良いに決まっています。そこで、今年は思い切って母に頼み、洋裁とミシンの使い方を教えてもらいました。

作ったのはケーナを収納するソフトケースです。ちょうど楽器ケースが付属していなかったので必要性を感じていました。

楽器の採寸、簡単な製図、生地の裁断、ミシンの操作など最後まで付き合ってもらい、世界に一つだけの笛ケースが完成しました。荒いところもありますが、私は出来上がりにとても満足しています。

今、こういった布もの製品はほとんどが海外で製造されており、自分で縫うよりも買うほうがよほど楽で安く品質が良いのですが、ぴったりな楽器ケースだけは探しても買うことができません。

私の楽器店の商品でもケースやバッグの取っ手が千切れた状態で入荷することがまれにあり、修繕ができず困っていましたが、今後は自分のミシンを手に入れて、自分で修繕したりオーダーメイドのケースを縫えるようになれたらと思っています。

人生に退屈したくないなら、挑戦を

20〜30代は波乱万丈だった私ですが、40代は事業が安定し健康で、人生で最もおだやかに過ごすことができています。しかしこのまま安定にあぐらをかいては、劣化していき時代に取り残されるのではないかという怖れもあります。最も怖いのは、人生に退屈して生きる意義を見出せなくなることです。

外からの刺激によって人生が動くときもありますが、凪の段階では自分から動いて風を起こしていくべきです。私と同世代で、人生に退屈し始めている人は、私と一緒に新しいことを始めてみませんか?