こんにちは! ケルト音楽専門の楽器店「ケルトの笛屋さん」を経営している、フルート奏者のhataoです。この連載では私のようなスモールビジネス経営に興味のある方に向けて、私の経験やアイデアを発信しています。
私は自分のビジネスに矜持を持って、誠実に商売をしているつもりなのですが、ときに誤解からか、傷つく言葉を投げられることがあります。
転売屋と言われて
その楽器にあまりに故障や不具合が多く、自社内では解決できないために同業者に修理を度々依頼していました。その店はその楽器の専門業者ということで、修理に関しても頼りに思っていたのですが、何度か取引をした後に「あなたのような無責任な転売屋のせいで、世間のこの楽器への評判が悪くなる」という苦情を書かれたことがあります。
転売とは、小売業者が一般的に問屋やメーカーから仕入れて販売することに対して、小売店から仕入れて利益を載せて売ることです。この行為そのものは、法律的にもモラル的にも間違ってはいません。しかし、普段はお店を経営していない個人のバイヤーが新発売の商品や災害時に必要なものなど需要の高いものを先に買い占めて高値で売るモラルの低い行為が横行したため、悪いイメージがつくようになったそうです。
本来、ヨーロッパ伝統楽器は高度なスキルを持った職人が手作業で製造するため単価も高く、入門者には手の出しにくい存在でした。
しかし近年は、伝統音楽愛好家が世界中に広がり需要が高まったために製造が追いつかず、また学生などからエントリークラスの楽器への需要が高まっています。そのためヨーロッパの楽器店であっても低価格帯の楽器は中国やパキスタンで製造し、それを検品また必要に応じて調整してから販売しているところが増えました。
弊社でも以前はそのような低価格帯の楽器をヨーロッパから輸入販売していたのですが、中国製造だと知ってからは、コストカットと利益率の向上を目指して直接中国から輸入する方向に切り替えたのです。
切り替え当初は弊社に知識とノウハウがなく、問題が起きればお客様には無償修理か交換対応、場合によっては返金をすれば問題がないと考えていました。他社への修理費用を弊社が全額負担しても、十分な利益が取れると考えたのです。お客様はより安く購入でき、修理業者にとっても仕事になり、三方良しだと思っていました。
しかし頼みの綱の修理業者は、このようなエントリーモデルの楽器の存在そのものを認めないポリシーでした。私がいくら、お客様の裾野を広げるためにこのような楽器は必要だと説得して認めず、品質の良い高級なものしか扱うべきではないと言われ、議論の末に先程の言葉を投げられたのです。
それ以後、私はこの業者との関わりを絶ち、自社で修理やサポートができる体制を整えるために、交換部品を充実させたり、メーカーとの緊密な連絡を取り合うようになりました。また、お客様が自身で楽器を調整できるように製品マニュアルを作って公開もしました。
ボッタクリと言われて
弊社は輸入楽器を扱っているのですが、YouTubeで公開している弊社の商品紹介ビデオに「この店はボッタクリである」と書かれたことがありました。
ボッタクリとは、相場を超えた法外な価格で商品を販売して利益を得る行為を指します。
たとえ国内では手に入りにくいものでも、商品名で検索をすればそれが本国ではいくらで売られているものなのか、すぐに調べることができます。インターネットとクレジットカードが使えれば誰でも個人輸入ができるこの時代、国内で買うのが高いと思えば、自分で輸入を試みることも難しくありません。
そのため弊社では、海外製品の販売価格の目安を(現地価格 × 130%)+消費税 を基準として考えています。
仮に10万円の商品を買いたい場合に国内で13万円+消費税であれば、自分なら国内で買うだろうと考えるからです。海外からの輸入にはセキュリティ上の不安や英語でのコミュニケーション、手元に届くまでの待ち時間、購入後のサポートなど不安材料があり、それを4万円程度で解消できるなら決して高くはありません。逆に、これ以上に値段を上げるとお客様は個人輸入を検討し始めるだろうと思っています。
もちろんこれはあくまで目安であり、単価が極めて安いものは薄利多売にならないように200%以上の価格にしたり、非常に高価な商品は売価が高くなりすぎないように110%程度にしたり調整しています。
商品を取り扱うビジネスというのは、商品代金に上乗せしてさまざまなコストを支払っています。輸入業務の時間とコスト、検品や倉庫代や光熱費など在庫管理のコスト、在庫にかかる税金、修理や交換や返品といったサポートのコストなど挙げるとキリがありません。これをすべて含めて価格が現地より30%高い程度でボッタクリと言われてしまうのは、私としては納得ができません。
身に覚えがないのに「ボッタクリ」と言われる場合、その人はいわゆる「原価厨」であるかもしれません。
原価厨というのはネットスラングで、ラーメン屋の原価がいくらなどと調べて、高いとかボッタクリだという人のことです。こういった人には、お店が売れるかどうかわからない商品のために多くのコストを支払って商品を仕入れ、その利益で生活をしているという想像力が欠けているのでしょう。原価厨の方は、外食も商店も利用せずに自給自足をしてみると、いかにお店やサービスの存在が便利でありがたいものか気づくかと思います。
どんなことを言われても説明できる姿勢を
弊社ではお客様や取引先に恵まれており、このような理不尽なクレームはめったにないのですが、それだけに時々心無い言葉を投げかけられると深く印象に残ります。
もしビジネスに後ろめたいことがないのであれば、どんなクレームに対してでも自分の考えを論理よく説明でき、間違ったビジネスをしていないことを主張できるようにしていたいものです。
それでは、また次回!