史佳

新潟出身の三味線プレイヤー。9歳より津軽三味線の師匠であり母でもある高橋竹育より三味線を習い始め 2000年よりプロ活動をスタート。新潟を拠点に国内外で演奏活動を行ってきた。古典を大切なベースとしながらも、伝統芸能の枠を超えた新しいニッポンの音楽を目指し、現在、ニューヨークを拠点に移し三味線芸術の新しい境地を開拓している。 YouTube公式チャンネル :https://www.youtube.com/channel/UCDcEsCsEsKHs6Oyv-i83Nfw

大自然のエネルギーを受け ~復活の兆しを探る~

いよいよ待ちに待った酒米菊水稲刈りの日__。

車窓から、すでに稲刈りが終わった越後平野を眺めながら、新発田市にある菊水酒造に向かった。
前日の大雨で気温がぐっと下がったので、防寒対策をしてそのときを待つ。

まずは高澤社長から、コロナ禍のため中止されていたこの稲刈りイベントが実に2年ぶりに開催されることへの
喜びの言葉がかけられた。その後若月取締役から、稲架掛け(はさがけ)のレクチャーを受けた。
稲架掛けとは、地方によって呼び名が様々あるそうだが、新潟では“はさがけ”と呼び
稲を束ねて稲架(はさ)と呼ばれる木を組んだ装置に干していく作業のことを指す。

天日で2週間ほどかけて乾燥させるのだが、これを行うことでお米が追熟
無理のない乾燥方法のため米に負担がかからないメリットがある。
近年の機械化によりほとんど見なくなった光景であるが、多くの人がこうして集まり
皆で協力して作り上げていく稲架掛け作業自体が、風情であり情緒的でもある。

さて、いよいよ稲刈りのスタートである。

今回は、プロデューサーの更家健吾もプロジェクト初参加である。
大雨の影響が残り、田んぼはぬかるんで作業がやりにくい。足元を取られながらも、鎌で稲を刈っていく。
最初はぎこちない動作だが、徐々にスピーディーに刈り取ることができるようになった。

約2時間、菊水社員の皆さんと総勢30人ほどで、稲刈り作業に没頭し、無事終了した。
5月に田植えを体験したが、稲刈り作業は、その数倍重労働だと感じた。
泥ダイビングできるような気力は、稲刈り時では起きず・・(笑)

稲刈り後、晴れの合間を見て、稲架掛けした稲に、三味線を聴かせた。

今後は、史佳オリジナル酒の仕込みに入っていく。お米作り、酒仕込み・・すべてが初体験であるが
この体験は、米を磨くのと同時に、自分自身の感性を磨くことになると確信している。
そしてそれは、まちがいなく三味線演奏にも活きてくるはずである。
指先の爪に入り込んだ泥が、稲刈り作業の充実感を感じさせてくれた。

そのまま、新発田の城山温泉へ直行。泥と汗を洗い流した。
エフスペースに到着した夕方、急遽平野映像ディレクターも誘い、男三人で焚火をすることに。
車移動がなければ、菊水の辛口で熱燗を・・と言いたいところだが
今回はコーヒーを飲みながら語らう。

8月14日の奇跡のコンサートを終えて、早2カ月。
走り抜けた直後は火が消えたようで、まさに燃え尽き症候群の私だったが
目の前の焚火の炎を眺めながら、復活の兆しを探る
少しずつではあるが、すでに新しい炎(目標)は見えてきている。

稲刈りから焚火まで、丸一日大自然の強さにエネルギーをもらった最高の一日であった。