松岡誠一(仏像文化財修復工房)

東京神田出身なのに、新潟で仏像・神像の保存修復活動中。全国どこにでも行きます。仏像調査も行います。地域の文化を守り、地域振興系の修復家でありたい。応急修復もします。 ●仏像文化財修復工房●地域歴史文化財保存支援http://syuuhuku.com

仏像文化財修復工房の松岡誠一と申します。

このほど、BREWのブログ書きの仲間にしていただきました、松岡誠一です。

「仏像文化財修復工房」という、文化財修復の理念をもって、仏像や神像の歴史を尊重した修復をする仕事をしています。ピカピカにしない方の修復です。

元々は東京出身なのですが、現在は、母の故郷の新潟に工房を構え、周辺各県の御像を修復させていただいております。全国どこにでも行きます。宜しくお願いします。

仏像修復の道に進んだきっかけ

祖父が古美術骨董が好きな人で、その血を継いでか、高校生の時から、東郷の杜とか、乃木神社とか平和島の骨董市にはまって、そういう古いものを直せたらいいなと考えているところに、大学の文化財保存科学コースというのを見つけて入学し、勉強したのが始まりです。

最初は仏像や仏教には全然興味はなく、仏像が直せれば、何でも直せるかなと軽い気持ちで、仏像修復の研究室を選んだのですが、そこから仏像彫刻が面白くなってしまいました。

仏像神像彫刻は、美術としての造形美も素晴らしいですし、歴史的な価値はもちろんありますが、他の美術品と違い、純粋な芸術としてではなく、信仰の対象として周囲の皆さんに大事にされているという側面が大きく、他の文化財の分野と少し違います。そして、修復してお返しすると、地域の方々にとても喜んでもらえます。また、仏像を直そうなんて考える人たちは、徳の高い、いい人が多くて、そんないい人たちの中で仕事がさせていただけるのが、この仕事の良いところかなと思います。そういう仏像の大事に思う方々に支えられて、これまでなんとかやってこられました。

 

皆さんの大事なものをよりいいかたちで、次の世代に渡していただけるように、元々の造形の良いところを引き出しつつ、御像が経てきた歴史を尊重して、御像に元気になってもらう修復をこころがけています。

仏像の歴史を尊重した、文化財としての修復

皆さんも京都や奈良や博物館などで、仏像彫刻を拝観された時に、古めかしい、ピカピカではない歴史の風格のある姿をしているのをご覧になっていると思います。それらの御像は、仏像の歴史を尊重した文化財としての修復が行われています。

ピカピカにすることは、仏様への功徳でもあり、一概に否定することはできません。しかし、別人に新しくなってしまい、それまでの歴史的な積み重ねが全く分からなくなってしまうと、とても「もったいない」。国や自治体の文化財に指定されていなくても、そのように、仏像の歴史を尊重した修復が行って、守っていくべきと思っています。

木彫の国、日本。全国に未調査の仏像・神像が多く残る

日本は、世界で一番と言ってもいいくらい、仏像や神像という「木で作られた彫刻」が全国津々浦々に残されています。この日本は木彫の国なのです。

全国には、まだまだ沢山の未調査の仏像や神像が残されています。壊れた仏像や神像も沢山あります。昨今の地方の過疎化や信仰観の変化で危機に瀕している御像もあります。そういうところにも、歴史や文化が残されています。今、手を差し伸べないと、無かったことになってしまいます。

 

地域にも、平安時代や鎌倉時代の仏像は残されていますし、江戸時代でもたいしたものです。地域を古くから見守ってくれています。

 

建築や絵画は江戸時代のものでも自治体の指定文化財になっていきますが、仏像はまだまだなって行っていません。江戸時代の仏像がそれなりに残っているということもありますが、調査や研究が遅れているというのもあります。

 

一体一体修復するだけでなく、仏像調査を行って、御像の製作年代や御像の事をよく知っていただくことで、より身近に感じて、大事に思っていただくような活動も大事だと思っています。修復家としては、変な考えかもしれませんが、壊れていたとしても、周囲のかたが大事に思っていただけていれば、仏像神像は残っていくようにも思います。そのような調査活動も日々行っています。調査後に自治体の文化財に指定していただくこともあります。

地域に残された仏像を、次世代に

地域に残された仏像を何とか、次の世代に残していきたいものです。是非皆さんも自分の住んでいる地域に、仏像や神像が残されていないか見まわしてみてください。多分古くから見守っていてくれている御像がいらっしゃるはずです。

 

仏像彫刻修復では、手が無ければ手をヒノキ材で彫って、復元したりするので、彫刻もしますし、台座が無ければ作るので、鉋をかけたり鋸で切ったりと木工もしますし、漆を塗って金箔を貼ったりと漆工もしますし、色を塗るのに彩色もするということで、色々な技術の集合体になります。その上に、仏像調査したり修復見積もりたてたりまでやったりするので、何でもやりすぎの観があります。その上、このブログの執筆までとなると、目が回りそうです。

 

ですが、せっかく菊水酒造さんから機会をいただいたので、仏像や神像の修復の話。調査の話。文化財保存の話、古いものの話など、思いつくままに書いていこうかと思います。

宜しくお願いいたします。