原点回帰のシリーズ『俺の三味線』がスタートした。
8月11日、オール古典曲で挑む特別なステージは、りゅーとぴあ新潟市民文化会館・能楽堂で行われた。
私がオール古典曲で挑む特別プログラムで構成した。
最近は、様々なミュージシャンとの共演やオリジナル曲の演奏に重きを置いていたため、私一人で古典曲に専念する機会は実に久しぶりである。
このコンサートは、三味線の原点とも真骨頂とも言える、伝統的な魅力を存分に感じて欲しいという思いを込めた。それは、私が50歳という節目を迎えるに当たって、自分自身ももう一度その原点に立って初心に戻り、そこからまた新しいスタートを切りたいという思いもあった。
三味線で一番難しい演奏スタイルはソロである。
ごまかしがきかないため、少しでもバチがひっかかったり、音が飛んだりすれば、すぐにお客さんに悟られてしまう。そのため、精神的にも肉体的にも大きなプレッシャーが伴う。
それでも三味線の奥深さを知ってもらいたいという思いから、この企画に挑戦した。
本編がスタートした。
「三下り」という調弦で演奏する曲を2曲、そして「本調子」という調弦にして、日本各地の民謡をメドレーで披露。観客の皆さんも思わず口ずさむ場面があり、会場も巻き込む一体感が生まれた。
今回のサプライズゲストはヴァイオリン奏者の庄司愛さん。
西洋楽器と和楽器の違いについて、ざっくばらんにトークが弾み、いかに西洋楽器と和楽器の共演が難しいかを皆さんに紹介する機会となった。
プログラム後半では、津軽三味線の歴史に触れた。
当時の門付け芸とされる最も古い『じょんから節』を演奏した。
私自身、この曲をステージで演奏する機会はあまりないが、現代で演奏されるものへの変遷や曲調の違いを知って、“時の流れ”を感じられる希少な時間になったのではないかと思っている。
アンコールは、私の十八番である『じょんから中節』。
繊細かつしなやかな旋律で締め括った。
終わってみれば、休憩なしで12曲を無事に完走。
終演後にはその達成感が、自信へと変わっていた。
三味線の良さを伝えることは本当に難しい。
古くから私の演奏を愛してくださるファンの方々にとって、今回の『俺の三味線』シリーズがどのように映ったのか、初めて聴きに来てくださった方々がどのように感じたのかも気になるところである。
しかし、暑い夏の一日、能楽堂の檜の香りと三味線の音に興じる時間が良いひとときだったと感じていただけたのなら、三味線本来の魅力を少しでも伝えられたのではないかと思っている。
『俺の三味線』シリーズ次回も、三味線の新たな一面をお届けできるよう挑戦を続けていきたい。