Yuka Koishi

イラストレーター、キャンプコーディネイター。 焚き火とお酒とカレー好き。 著書に「そうだ、キャンプ行こう!」(スタンダーズ)、「カメラ、はじめます!」(サンクチュアリ出版)、「日本酒語辞典」(誠文堂新光社) がある。

BBQの季節はもうすぐ!今年は「炭」から選んでみませんか?

梅雨明けももうすぐ、そろそろ夏が到来します。

夏のイベントの1つとしてBBQなどに行かれる人も多いのではないでしょうか?

ローストビーフや、鳥の丸焼き、ピザや海鮮などに挑戦するのも楽しいですが、

今回は熱源として必要な “炭” についてのお話をしようと思います。

BBQで炭を買う前に、ちょっとだけ知ってほしいこと

実は、ホームセンターで販売しているとても安価に売られている炭は、本当の炭じゃないってご存知でしたか?よくわたしたちが安価で見かけるのは、マングローブ炭やオガ炭です。マングローブ炭は東南アジアのマングローブ林からとってきたものです。

オガ炭は、製材工場からだされるオガくずを加熱圧縮して成形された木炭のことを言います。

それぞれの品質はのちほど詳しく説明します。

少し難しい話をします。社団法人全国燃料協会において日本の燃料用木炭の規格が決められています。黒炭、白炭、備長炭、オガ炭など様々な種類1つ1つに定義と品質基準があるんです。主な基準には、固定炭素、発熱量などの数字で決められています。

(参考:「燃料用木炭の規格」
http://www.zen-nen.or.jp/pdf/nenryokikaku.pdf

比較するときにわかりやすいのが「固定炭素」。
簡単に言うと、固定炭素率が高いほど「良質な炭」と考えてもらっていいと思います。海外産の黒炭は固定炭素が59%。ここで先ほどの木炭の規格を見てみると、固定炭素は75%以上でないと黒炭としては基準を満たしていないことになります。

要は、言葉は悪いのですが一般的に安価に目にするマングローブ炭は丁寧に作られていないただの木の燃えカスです。これを燃やすとどうなるのか。

そもそもなぜBBQでは炭を使う?

ところで、そもそもなぜ、BBQでは炭を使うことが推奨されているのでしょうか?

最近ではガスグリルなども普及していますが、日本ではよく炭を燃やして肉を焼く光景を目にしますよね。これは、お肉や食材を中からじんわりとあたためて旨味をとじこめジューシーに焼き上げるためにいいとされている「遠赤外線効果」を狙っているから、だと思います。

固定炭素が低い炭は、あっというまに燃え尽きてしまい、遠赤外線効果も少ないのでそもそも「お肉をおいしく焼く」には向いていません。

それでは一体何の炭がBBQに向いていて、食材をおいしくしてくれるのでしょうか?

日本で一番生産されている炭を知っていますか?

 

2017年、日本での木炭の生産量は23.095t。
そのなかで約15%3.303tの生産量を誇り第一位となっているのが「岩手県」です。

アウトドアショップやホームセンターで見かけたことがある人もいるのではないでしょうか?

ナラの木を伐採して、作りあげた木炭をBBQなどに使いやすいようにカットされたものが「岩手切炭」といいます。

わたしがおすすめしたいのはこの「岩手切炭」です。


岩手切炭が気に入っている理由

もちろん国産の炭には良質で、よりいいものはたくさんあると思います。

その中でも火付けがしやすく、手に入りやすく、コストパフォーマンスのよい岩手切炭がとても好きで気に入って使っています。

炭の質としては、最高と言われる備長炭もいいのですが

6時間ほど火力が安定すると言われいますが、火付けに1時間かかるため、

備長炭より火付けが早く、4時間ほど火力が保てる岩手木炭がちょうどいいと感じています

炭を選ぶことで森を守ることができる

「それでも安い、気軽に買えるもののほうがいいじゃないか」

「どちらにしても森林破壊なのでは?」

などという声が聞こえてきそうなので、最後に環境についてお話をします。

先ほど紹介した安価で手に入りやすい、マングローブ炭は、マングローブ林から伐採されており、生態系の乱れや水害など深刻な問題となっています。また、オガ炭を作る際の製造工程や輸送時のエネルギーに多くのCO2が排出されているんです。

岩手木炭はナラの木から作られていますが、そのナラの木は、実は木の成長を見据えて適齢でかることで、森の成長につなぐことができます。逆にナラは、伐採せず年を重ねると再生能力が低下してしまうとも言われています。若い原木は木炭生産に最適であるため、そういった森との循環によって岩手木炭がつくられています。森を守り、人との共存のために必要な循環なのでは、とわたしは思います。

小難しいことを淡々と述べましたが、実は岩手切炭、良質なので量もそこまで使わなくてすむので結果的にはコストも安く押さえられるんです。

・良質なので、遠赤外線効果でおいしく食材が焼ける

・値段も高価すぎない

・火付けしやすい、火力長持ち

BBQにおすすめなポイントしかないのに、

選ぶだけ、買うだけで「森を守る」につながるのなら、なんだか気持ちが良いですよね。

 

今年のBBQは、そんな少しの炭のうんちくを話しながら、楽しんでみてもらえたらうれしいです。