hatao

ケルト&北欧の笛奏者、音楽教師、音楽教材著者、楽器店経営者。 ハープと笛のhttp://hataonami.com、ケルトの笛屋さんhttp://celtnofue.com 演奏、教育、普及で音楽を広める。18年京都烏丸錦に、19年東京都ひばりヶ丘に日本初ケルト音楽専門の楽器店を開店。En한中 3か国語学習中。

コロナ災害を音楽家としてどう生きるか

みなさん、こんにちは。ケルトの笛のhataoです。コロナウィルス感染蔓延による緊急事態宣言が全国対象に広がり、日本全国で影響が広がっています。

クルーズ船での集団感染が起きた2月上旬は、まだ政府も国民も対岸の火事のように甘く見ていたように思います。僕はその頃に台湾におり、あちらでは大変なニュースになっていました。台湾の厳重警戒ぶりを見ていたので、この様子では日本は大変なことになるだろうと感じ、店のスタッフや両親に、事態の深刻さをラインなどで送りました。それから2か月で、世界は一変しました。その出口は、また見えていません。

できるだけ時事問題、特にコロナ災害については述べたくなかったのですが、この時期の記録を残しておきたいことと、誰かの参考になればと思い、話題にすることにしました。

音楽家としての自分への影響、楽器店への影響、そして現状と展望を数回にわけてシェアしたいと思います。

音楽家として受けた影響

2月25日に帰国、世間はまだダイヤモンド・プリンセス号や中国帰国者の感染を報じている頃でした。

3月に入って最初に中止を決断したイベントは、3月22日に予定していた生徒さんの60名くらいでの交流会です。ケータリングや大合奏を予定していたため、感染者が参加していた場合、感染を防ぎきれないと判断しました。また、参加者に高齢者が多かったことも理由でした。

3月には、CD発売記念コンサートを全国各地で予定していましたが、いくつかは会場からキャンセルが来ました。最初にキャンセルが入ったのは、官公庁主催のコンサートや講座です。東京での自主企画コンサートは飛行機での移動だったため、みずからキャンセルしました。中止ではなく、5月に延期にしたものもありました。

まだ緊急事態宣言が出る前のことですから、この頃は、音楽家たちの自主的な判断に任されていました。開催をしていた仲間も多かったです。

しかし3月中旬に大阪でのライブハウスの集団感染が発生してからは、明らかに音楽家への世間の視線が厳しくなってきたと感じました。緊急事態宣言前は、大阪ではイベントを開催するかどうかは自主判断に委ねられていましたが、ネットでは主催者や参加者が叩かれているのを良く見ましたし、開催したとしても参加者は複雑な気持ちだったのではないかと思います。

3月は新幹線を使って通勤する名古屋でのレッスン、自動車を使っての奈良県でのレッスンを通常開催しました。生徒さん達の雰囲気は、まだそんなに大ごとではない、気にしていないという様子で、大部分は自宅のレッスンにも通ってくださっていました。オンライン・レッスンを希望される方が1名いましたが、かなり情報を自分で入手されている方なのだと思いました。

3月21日の楽器店イベントは万全の感染対策を施して開催しました。これは本ブログに書いたとおりです。これが1ヶ月あとの4月21日だったら、完全に中止になっていたでしょう。3月最後の週は、パブでのライブも通常開催しました(お客様は少なかったですが)。

4月に入り僕の住む兵庫県も含む緊急事態宣言が発出されました。これによって名古屋でのグループレッスンは中止。一度延期になったイベントも、緊急事態宣言の解除前の開催予定だったため、2度目の判断によって中止となりました。パブのライブは、15年近く続けてきて初めて、無期限休止することになりました。

これ以後はもう「延期」という判断はしないようになりました。というのも、2回目の延期もありうることを知りましたし、年内はイベントは無理だろうという噂も立ち始めたからです。また、新しい予定も入らなくなりましたし、自ら予定を立てることもしなくなりました。3月の頃は、まだ秋なら大丈夫だろうという思いもあったのですが、今は秋も開催できるかどうか怪しいと考えています。

一番ショックだったのは、とても楽しみにしていた7月のカナダでのフルート講習会がキャンセルになったことです。講師として初めて参加する予定でした。

現状、先のコンサートの予定は一切なくなりました。

まわりの音楽家の状況

今は音楽家を含む芸能関係はすべて仕事が無くなった状況だと理解しています。現在この非常事態下でお客さんを集めて興行をしている人がいたら問題がありますし、その前に世間が許さないでしょう。

ライブ中心に活動をしている音楽家は失業です。貯金があれば、長い休暇のつもりで楽しく過ごせますが、貯金のない音楽家は生活面も精神的にも追い詰められているのではないかと想像します。そして、いつ元のライブの仕事ができるようになるか分からない、フリーランス音楽家への補償もないという状況は、相当キツイと思います。悲鳴がちらほら聞こえてきます。

4月からはライブ配信やYouTubeで演奏活動を始める音楽家がたくさん出現しました。これまでライブ中心に回っていた生活を、オンラインにスライドさせた活動とも言えます。

ただ、同じことをする音楽家が爆発的に増えたので、視聴者の奪い合いになってしまい、完全なレッド・オーシャン(競争過多)状態です。そうでなくても、YouTube、Amazon PrimeとかNetflixなど魅力的なコンテンツがたくさんあるのに、そんなに大勢の人が観るでしょうか? 仕事としてやるにしても、課金システムが不十分だと思います。

SNSで演奏動画を投稿したり、バトン形式で音楽家が演奏動画をリレーする動きも盛んです。これ自体はお金にはなりませんが、ファンとのつながりを保つため、または世間に自分の存在を知ってもらうためでしょうか。いや、音楽家というのは単に、演奏して誰かに聴いてもらわないと枯れてしまう存在なのかもしれません。

レッスンができる音楽家は、オンライン・レッスンを始めました。Zoomがいいとか、Skypeがいいとか、色々と比較しあっているようです。こちらも、普段の仕事をそのままオンラインにスライドした形です。不特定多数相手に音楽のレクチャーをする方もいるようです。

普段はお金を払った人だけに演奏やレッスンをしていた音楽家が、オンラインという誰でもアクセスできる環境で演奏やレッスンを提供する動きは、一人の愛好家としては僕はとても嬉しく感じますが、一方で、自分自身はこの流れにはほぼ参加していません。

これまで対面でやっていたことをそのままオンライン移行することには限界を感じますし、マーケティング的にも苦しい戦いです。そして今みんながしていることには、何か決定的な方法がまだ出ていないような気がしています。

コロナ後の音楽の世界を見てみたい

コロナ終息後は、元の世界には戻れなくなってしまっているとも言われています。対面でのコンサートやレッスンは無くなりはしないでしょうが、オンライン・ツールが急速に進歩し、オンラインで音楽家が収入を得る方法も充実してゆくことでしょう。

個人的には、おそらく緊急事態宣言が開けただけではまだライブは開催するには程遠く、ワクチンが全員に行き渡り、WHOが終息宣言をするまではライブはできないのではないかと思っています。すると、1年~2年でしょうか。あるいは、経済的影響に耐えかねて、感染リスクを引き受けて開催する動きも出るかもしれませんが、僕は命が惜しいです。

僕はいまの時間を、執筆と製作、そして練習にあてて、世間の流れとは無関係に、自分のすべきことに集中したいと思っています。そのことについては、またこのシリーズで具体的にお話をします。

実は、この後の世界がどうなるのか、ちょっとワクワクもしています。きっと良い変化もたくさん起きると思っています。その変化を届けるためにも、健康にコロナ災害をやり過ごしましょう。