hatao

ケルト&北欧の笛奏者、音楽教師、音楽教材著者、楽器店経営者。 ハープと笛のhttp://hataonami.com、ケルトの笛屋さんhttp://celtnofue.com 演奏、教育、普及で音楽を広める。18年京都烏丸錦に、19年東京都ひばりヶ丘に日本初ケルト音楽専門の楽器店を開店。En한中 3か国語学習中。

語学力をスモールビジネスに活かす

こんにちは!ケルト音楽専門の輸入楽器店を経営している、フルート奏者のhataoです。

8月に入り夏真っ盛りですが、読者の皆さんは夏らしいこと、していますか?

私は和歌山県の海と川で泳いできました。暑い日はクーラーの効いた部屋でアイスでも食べて涼しく過ごしたい……という気持ちになります。しかし、「カーン!」と暑い日は案外少ないもの。9月になって「今年の夏は何もなかったなあ」と後悔しないように、暑いうちに夏らしいことをめいっぱい楽しみましょう!

和歌山・那智勝浦の海

スモールビジネスと語学

この連載では、3店舗の小さな楽器店を営む私hataoが、起業やスモールビジネスについてのよもやま話を書いています。

前回の連載は「文章力」についてのエピソードでした。文系人間の私、今回も得意分野についてお話します。今回のテーマは「スモールビジネスと語学」です。

英語が苦手……という方は多いとは思うのですが、経営者にとって語学力はやっぱり大事です。ビジネスと語学について、改めて考えてみましょう。

まず私と語学の関わりについてお話します。中学生の頃から英語が得意科目だった私は、大学では言語学コースを専攻し、大学卒業後も趣味として語学学習を続けています。現在は英語、中国語、韓国語を日常的に学習し、仕事に使用しています。言語によってレベルは異なりますがおおむね中上級程度です。

ホームページでは英語、中国語、韓国語で店舗の紹介をしています。

発音が下手で恥ずかしいですが、こちらに貼っておきます。

語学を強みに起業

私の楽器店では、国内の問屋を通さずに海外から直接楽器を輸入しています。取引先は十カ国以上で、欧州や北米の取引先とは主に英語を使っており、さらにここ数年は中国、台湾、韓国にも取引先を広げ、それらの国では現地語でコミュニケーションを取っています。

私は起業前の音楽家時代から、自分の演奏する楽器や聴きたいCDが国内では手に入らなかったので、海外のお店や楽器職人に注文をして個人輸入をしていました。私のようにマイナージャンルの趣味をお持ちで、国内市場が小さいため個人輸入をした経験のある方もいらっしゃるかと思います。

そんな自分にとっては海外ECサイトでの買い物や、クレジットカード決済、送金手続きは手慣れたものでした。しかしむしろ世間では個人輸入をする人は少数派で、外国語が苦手な方にとっては大きなハードルであることに気がついたのです。起業を考えていた頃、これを仕事にできないかと考えました。

私が起業をした当初の理念は、「ケルトの伝統楽器と音楽文化を、日本人の手に届きやすくするお手伝いをする」でした。その理念は、今でも変わっていません。

  • 毎日の業務でも外国語は必須

私の仕事では、常に外国語を使っています。

輸入販売に関しては、取引先とのメール、楽器の選定、決済や送金、届いた商品に問題があった時の交渉などがあります。お客様から輸入代行の依頼があれば、お客様とメーカーとの間で翻訳を行いコミュニケーションのお手伝いをします。楽器についての細かいご要望やメーカーからの仕様についての説明などは、誤解なく確実に伝わるように特に気を遣って翻訳します。また、楽器や音楽家についての海外のブログ記事やインタビュー記事を先方に許可を得て翻訳して当店のお客様向けに紹介しています。

演奏する音楽が海外の音楽なので、教則本や資料集など日本語で読める文献がありません。そのため、情報を取得するにも英語を使います。日本で手に入る情報とは質・量・スピードともに比較にならないため、海外の文化に関わることを仕事にしている方にとっては、どんな仕事であれ、その国の言語を習得するのは必須だと考えています。私がこれまで書籍を10冊以上出版したのも、海外の情報に大量に触れることができたからです。

情報を発信する際にも、語学力は強みになります。FacebookやYouTubeで日本語だけで発信しても、外国人の目にはなかなか留まりません。世界と時間差なく情報共有ができる現代、自分の取り組んでいることを外国語で発信できる人には大きなアドバンテージがあります。

以上のように、私の仕事は外国語を使うことによって成り立っており、仮に日本の公用語が英語で、誰もが言語のハードルなく世界の情報にアクセスできるのであれば、仕事になっていなかっただろうと思います。

  • できれば英語以外の言語も

語学学習は私にとって趣味なので、10年ほど前から中国語を、2年前から韓国語を学習し始めました。私の仕事であるケルト音楽とは無関係の地域の言語です。これらの言語に触れたおかげで、仕事をさらに広げることができました。

中国語を始めたきっかけは台湾人の生徒ができたからです。一度彼を訪ねて遊びに行った際にすっかり台湾が気に入ってしまいました。現地で出会った人々と交流するために、中国語を学ぼうと思ったのです。以後毎年コンサートやレッスンで台湾を訪れるようになり、数年前からは中国語でレッスンを行っています。また、日本の楽器店から依頼を受けて、台湾の楽器を日本に流通させる輸入代行業務をしています。

韓国語も同様に、コンサートでソウルに行ったことをきっかけに料理やドラマが大好きになり、韓国語学習をはじめました。韓国語を学習したことで仕事が広がり、ソウルの音楽家の友人を通じて当店の商品を委託販売したり、日本の楽器の購入の取次をしたりしています。

アジア人同士で英語を使ってコミュニケーションを取るのは、お互いにとって母国語ではないということもあり、違和感があります。ビジネス目的であれば英語を使って最低限のコミュニケーションを取ることができれば良いのですが、友達ができ、そして相手がそれほど英語が得意でないのであれば、どちらかの言語でコミュニケーションを取るほうが気持ちが伝わり、関係はさらに親密になるでしょう。

英語が得意な方は日本に何百万人といるかと思いますが、加えてもうひと言語を中級レベル程度でも習得すれば、人材としての希少性は更に高まります。ビジネスシーンにおいては、例えば台湾とアメリカの会社の間で取次をするとか、アメリカから仕入れた商品を台湾や中国で販売するということが可能となるでしょう。

  • 日常生活の中に語学学習を取り込む

  • 語学学習のスタイルや方法論は人それぞれに向いているものとそうでないものとがあります。文法や単語を覚えるのが好きな人と会話やリスニングが好きな人。先生につくか独学か。短期集中型と長期型。検定試験を受けるか受けないか。

しかし誰にとっても大切だと思うのは、語学学習を習慣化することです。短期で詰め込んだ知識も使わなければ忘れてしまいます。毎日リスニングや音読をする、独学でペースが作れなければ定期的なレッスンを受けるなど、日々のスケジュールや行動週間に語学学習を取り入れましょう。

私は週3回30分の韓国語のオンライン・レッスンと週1回60分の中国語のオンライン・レッスンを中心に学習ペースを作っています。ほかに家事や入浴、運転や散歩など耳が空いているときにはポッドキャストやNHKのラジオ語学番組を聴いています。音楽家として恥ずかしいことかもしれませんが、音楽を聞く時間よりも語学教材を聴いている時間の方が長いです。

このほかに、ここ数年間、1月から1ヶ月間にわたり台湾と韓国に語学短期留学を経験しました。留学中は課題に追われますが、集中して語学学習に取り組めるので、私にとっては何よりも楽しい休暇となります。留学中は機会があれば現地でコンサートをしたり、音楽を教えたりもします。

留学をする時間が取れなくても、数日間旅行をするだけ語学力の成長を実感し、モチベーション向上につなげることができます。私はこれからも、毎年の短期留学を楽しみとしていくでしょう。

  • 学習は一生続く。焦らず、諦めず

こう得意げに書いていると、私がさぞ語学の達人でネイティブのように外国語がペラペラと喋れるのだろうと思わるかもしれません。しかし、まったくそんなことはありません。字幕なしで映画を完全に理解することはできませんし、ネイティブのように流暢に喋ることも書くこともできません。

これだけ時間とお金を費やして、たったこの程度の実力かとがっかりすることや、単語が覚えられず、また、習ったことが思い出せず、情けないと思うこともしばしば。ですが、そこは開き直りましょう。知らないことを知ること、できなかったことができるようになる過程に成長の喜びがあるのです。コツコツと学習を積み重ねていけば、いつかは高みに到達するはずだと信じています。

語学の専門家になるのが学習の目標ではありません。商品詳細を現地語で読めるようになった、というだけでも、立派な成果です。

まったくその言語を知らないでビジネスをするのと、たとえ挨拶や数の数え方程度であってもその言語を知っているのとでは、相手からの印象や信頼関係にも大きな差が生まれます。ぜひ、皆さんも私と一緒に語学学習を習慣化しましょう!

それではまた次回。