hatao

ケルト&北欧の笛奏者、音楽教師、音楽教材著者、楽器店経営者。 ハープと笛のhttp://hataonami.com、ケルトの笛屋さんhttp://celtnofue.com 演奏、教育、普及で音楽を広める。18年京都烏丸錦に、19年東京都ひばりヶ丘に日本初ケルト音楽専門の楽器店を開店。En한中 3か国語学習中。

音楽やアートでプロになりたいあなたへ、4つの職業タイプを紹介

こんにちは! ケルト音楽専門の楽器店「ケルトの笛屋さん」を経営している、フルート奏者のhataoです。この連載では私のようなスモールビジネス経営に興味のある方に向けて、私の経験やアイデアを発信しています。

会社経営者でありながらフルート奏者でもある私。

かたやマーケティングや利益の世界、かたや創造力と独創性を重視する世界というように、一見、まったく異なるセンスや頭脳が求められるように感じられることでしょう。しかし私にとってはどちらも「思いの表現」だと考えており、まったく矛盾することなく両立しています。

私はまず音楽家であり、10年前から経営者になりました。長く音楽活動をしていると、経営者目線で見て「プロ・ミュージシャン」にも様々なタイプがいることがわかります。「好きを仕事に」と叫ばれるようになって久しく、多くの人が自分の趣味で収入を得られればと夢を見ています。

そんな音楽やアートでプロになりたいと考えている人に向けて、今回の連載では4つの職業タイプを紹介します。

今回紹介する4つの分類は、ベンチャー経営者や個人事業主にとっても、ブランディングのために役立つことでしょう。

1,ティーチャー


スキルを手っ取り早くお金に換えるには、まずは人に教えることです。YouTubeを見てみてください。誰もが自分のスキルを教えたがっています。料理、ガーデニング、手芸、楽器、スポーツ、語学に資格試験となんでもありで、どのジャンルも多くのユーチューバーが人気争いをしています。

ティーチャーになるためには、標準的な正しいとされる方法を自分自身が実践し、人に教えられることが条件となります。独学で身につけた、あまりに個性的なスタイルはなかなか人に教えられませんし、生徒も集まりにくいでしょう。かつて私と一緒にバンドをしていたあるミュージシャンは、とても楽器が上手でしたが、個性的なスタイルや音楽性だったため人に教えることができず、レストランでアルバイトをしていました。私は当時カルチャースクールで講師をしていたので、彼が人に教えることができればもっと長い時間を音楽に費やすことができるのに、と思ったものです。

何かに長じていれば人に教えられるというものではなく、人に教えるのも技術や才能が必要です。音楽などの芸術分野では、言葉を使って物事理解し、言葉で上手に人に伝えることができる左脳的な思考をするタイプが向いているでしょう。優秀な講師には、生徒がつまづきやすいポイントを知り、何ができずに苦しんでいるのかを知ってアドバイスができる観察能力や共感能力が求められます。

2,プレーヤー

次にスキルを手っ取り早くお金に換えるには、実演することです。音楽であれば演奏をして稼ぐことであり、絵画であれば依頼を受けたり描いたものを売ったりすることです。純粋なプレーヤーには独創性とか創造力というのはそれほど求められていません。音楽の仕事には名前の出ないもの、例えば歌手の伴奏とかCM音楽の伴奏といったものがあります。そこでは要求される音をきちんと演奏すれば良く、それ以上のものは求められません。商業的なクオリティを満たせば良いので、一流奏者や有名奏者である必要もありません。

むしろ求められてもいないのに変に個性を出そうとしたり、書かれていることと違うことをしようとしたりすると、依頼主にとっては「不安定で使いにくい人」という評価になってしまうでしょう。依頼主の要求をしっかり理解して、一定以上のレベルでミスなく卒なく、納期をしっかり守って納品ができる人が求められているのです。職人と言ってもよいかもしれません。スタジオでの録音仕事など必ずしも聴衆と意思疎通をしなくても成立する現場もあり、集団の先頭に立ったり人と接したりすることが苦手なタイプでも仕事にしやすいでしょう。

プレーヤーには高い技術力とミスをしない安定感、依頼主の要求を理解し実現する能力が求められます。

3,パフォーマー

人を喜ばせることにやりがいを感じている人です。音楽家であれば、アクロバティックな演奏をしたり奇想天外な演奏をして客席を沸かせることが大好きな人です。このタイプの人は「お約束」を嫌うので、徹底した現場主義で、客席の状況に合わせて即興でどんどん自分の演奏を展開していく能力に優れています。音楽は聴衆とのやりとりの中でしか存在しないと考えて、もっと盛り上げるにはどうすれば良いかと日々考えて実践しています。トークのレベルが高く、人の心を察して場の雰囲気を良くする能力に長けています。

パフォーマーは現場での瞬発力に優れていますが、計画的にものごとを達成することが苦手で、クライアントから細かいオーダーを出されたり、逸脱が許されないような環境では実力を発揮できない場合があります。

「人にウケること」「人気があること」を重要視し、ライバルと切磋琢磨する環境を好む競争心の高いタイプがパフォーマーに向いています。パフォーマーには高い技術力はもちろん、ユーモアや会話能力、異なる環境に対応する柔軟性が求められます。

4,アーティスト

独創性を重視し、オリジナルでなければ存在意義がないと考えているのがアーティストです。人のマネをしないこと、自分独自であることが絶対で、誰かにやり方や方向性を決められることを嫌います。他人がどうしているかなど気にせず、むしろ意識的に他人のやり方が目に入らないようにし、徹底的に自分と向き合います。

アーティストにとっては自分が人からどう思われているのか、自分は何を求められているのかよりも、自分が何をしたいのかのほうが重要です。そのため、人気を得るために何かをしようとは考えませんし、自分の思いを存分に発揮した結果、誰からも認められなかったとしても仕方ない、という覚悟を持っています。

人が誰かに「芸術で飯は食えない」とアドバイスするとき念頭に置いていることは、このアーティストでしょう。事実、お金を稼ぐ難易度はティーチャーやプレーヤーの比ではありません。

アーティストは、たまたま時流に乗って世の中に受け入れられれば他に挙げたどのタイプ以上に爆発的に成功する可能性を秘めています。歴史に名を残すのは、優れた教師や演奏家やパフォーマーよりもアーティストであるほうが多いようです。もっとも成功できるのはごく一部なので、99.9%は数少ない理解者や支持者に支援されながら、他の仕事で現金を稼いだり、時々教える仕事をしていることが多いように私は感じています。アーティストには独創性、創造力、孤独と向き合う胆力、他人の意見に振り回されない意志力が求められます。

以上、音楽や芸術で仕事をする人の4タイプを解説しました。
あなたの周りの音楽家や芸術で食べている人の顔が浮かびましたか?

次回の連載では、そのすべてを少しずつ体験した私の経験と考え方をシェアします。それではまた!