SHINGO KURONO

1985年生まれ。2006年フランスへ渡りデザインを学ぶ。帰国後国内のデザイン事務所で経験を積み、2015年独立、デザインプロジェクト humar.(ユーモア) に参加。プロダクト、グラフィック、WEBデザインなどジャンルレスにデザイン活動をしている。作る側とそれを使う側の新しいコミュニケーションを模索するTHE HOTEL LINKSや、お茶ブランドTheThéを運営。 http://www.shingokurono.com http://humar.co http://www.thehotellinks.co http://the2.co

のぞみを失った僕にかすかに見えたひかりは遠ざかり、音だけがこだましていた。

もうすぐ東京に出てきて10年だ。

10:00 時間がない。こんなに並んでいるとは思わなかった。

10:03 おかしい。切符の券売機の画面がいつもと違う。もはや目を閉じてでも買えるくらいになっていたはずだ。なんとなくデジタルな感じになっている。

10:06 浜松まで3340円。あれ。なんか安い。そうか、電車賃安くなったのか。んなわけない。どうしてだろう。

10:08 あと2分でホームから新幹線が出てしまう。

10:09 切符が一枚しか出てこない。そうだ。乗車券が買えてない。まぁとりあえず乗れば大丈夫だ。とりあえず乗ってしまえばなんとかなる。きっと車内でも買えるだろう。

10:10 改札が通れない。やっぱりだ。そりゃそうだ。どちらかといえば特急券よりも乗車券の方が必要だ。

ひかりは僕の網膜にうつることもなく、発車音がかすかにこだましていた。
Shingo Kurono

 

 

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