hatao

ケルト&北欧の笛奏者、音楽教師、音楽教材著者、楽器店経営者。 ハープと笛のhttp://hataonami.com、ケルトの笛屋さんhttp://celtnofue.com 演奏、教育、普及で音楽を広める。18年京都烏丸錦に、19年東京都ひばりヶ丘に日本初ケルト音楽専門の楽器店を開店。En한中 3か国語学習中。

シリーズ限界集落で暮らす 第二話「お掃除、片付け大作戦」

こんにちは! ケルトの笛奏者で、ケルト音楽専門の楽器店「ケルトの笛屋さん」を経営しているhataoです。この連載では、スモールビジネスを営む私が起業やビジネスについてアイデアと経験をみなさんとシェアしています。

私は和歌山県の山奥にポツンと4軒家(?!)を所有しており、今年から山奥の秘境に転入しました。そこは世界遺産「熊野古道」のエリアにある、谷筋を沢づたいに入った最奥の行き止まり。上下水道とガスはなく、電話は入らず、沢水を生活用水にして、薪でお風呂を沸かす暮らしです。そんな秘境暮らしの様子を時々書いていきます。

さて、今は4軒ある家屋ですが、そのうち最初の2軒を購入したのが5年前の2018年。当初は車を所有していなかったので下見もせずに印象だけで購入を決めたのですが、レンタカーで初めて現場に行ってみて言葉を失いました。家の中には前の住人の生活道具や衣類が雑然と残り、敷地は背丈もあろうかという笹薮で見通せないほどだったのです。これを片付けるのか……。私の田舎暮らしは掃除と片付けから始まりました。

釘一本も見逃さない

家というのものは、数年間が暮らしていなかっただけで相当汚れます。埃がつもり、あちこちに蜘蛛の巣が張り、窓は泥だらけ。雨漏りがあれば最悪で、躯体が腐ったりして回復できないダメージを受けてしまいます。この家は雨漏りこそありませんでしたが、汚ない上に、衣類や本やレコードやさまざまな生活道具が残されていたので、お化け屋敷と言われても仕方のない状況でした。

田舎を訪ねるテレビ番組で家の内部が紹介されると、モノが多く雑然とまとまりがなく、家がとても散らかっている印象を受けます。私は、この家には気に入ったものしか置かない、すっきりと綺麗に暮らしたいと思っていました。

前の住人から家財道具はすべて処分して良いと言われていたので、家具や日用品の使えそうなものをよけて、まとめて処分しました。この自治体では大量のごみを処分する際は処分場に持ち込みができ、軽トラ1台分数千円という程度で安く処分できます。知人に軽トラを出してもらい、何回にも分けて持ち込みました。

ゴミのほかにも、木造住宅なので壁のあちこちに釘やヒートン(ものをひっかける金具)が刺さっています。それらも、危ないし見た目が悪いので一本も残さずに丁寧に探して抜いて行きました。

続いて掃除です。泥で視界が濁っていた窓はすべてはずして、水で洗い流しました。窓が綺麗だと心もすっきりしますね!

この家の床は、近所の小学校が解体されるときにもらってきた廃材で作ったと聞いています。そのため、長年の汚れが蓄積して真っ黒。裸足で歩くのもためらわれるほどの汚さです。水拭きしてある程度汚れを落としたあと、落ちないペンキ汚れや奥まで染み込んだ汚れは「サンダー」という電動ヤスリで落とします。

キッチンはそれでも綺麗にならなかったので、汚れの上から白ペンキで塗ってしまいました。

敷地の掃除

家の前の敷地は畑だと聞いていましたが、うっそうと雑木や笹が茂っており、地形もわからないような状態です。薮のせいで見通しが悪く、家に陽があたらず、不気味な雰囲気になっていました。

私は樹種についてはまったく無知だったので、余計そうに見える雑木を手当たり次第に切っていきました。当初は何の樹なのかもわからなかったものの、調べながら進めるうちに、「茶の木」や「梅の木」や「山椒の木」であることがわかり、切るべきものと残すべきものがわかりました。石垣の隙間からもたくさんの草木が生えており、それらを全て刈ることで、地形の全貌がやっと見えたのでした。

続いて草刈り。街の家では庭がないので草刈りなどやったことがありません。最初は鎌で地道に刈っていましたが、これでは効率が悪いので草刈り機を買いました。あまりのパワフルさに驚きつつ、さくさく綺麗になってゆくので楽しい作業でした。

雑木を切って草刈りをすると、敷地に大量のゴミが埋められていることが判明しました。コンクリートブロック、使われていない水道管や、吹き替えた大量の瓦……。前の住人の、さらに前の人のものだと思われます。これではつまづいたり、草刈機に当たって危険です。この敷地はゴミひとつ落ちていない綺麗な土地を目指したかったので、スコップで掘り返しては運んでまとめます。出るわ、出るわ。延々と続く単純な肉体労働でした。

快適な暮らしはゴミ捨てから

TV番組や映画で登場する「心霊スポット」は、暗く、狭く、汚く、雑然と散らかっていて、寂しそうな場所というイメージがあります。決してその逆の、明るく、広く、清潔で、モノが少なく、賑やかな場所ではないはずです。

この家を初めて見た時の印象は「心霊スポット」そのものでした。ここに一人で暮らすと思うと寂しくて逃げ出したくなるほどでしたが、それと同時にこの家をすっきりと綺麗で、いつまでも住んでいたくなる快適な場所に改造しよう!と思うと、ワクワクして、力が湧いてきたのでした。

最初の大掃除と片付けをしてからも、家というのは常に汚れて、壊れて、散らかっていきます(詳しくは知りませんが、エントロピー増大の法則というのでしたか?)。ここにいる時は、常に快適な環境を保てるように心がけています。モノをできるだけ少なく、整理整頓をして、収納を工夫し、汚れたらすぐ掃除をし、草や雑木が伸びないように管理する……。

日々の作業は、決して少ない労力ではありません。こういった意味からも、効率性だけを考えるのであれば都会のワンルームマンションに暮らすのがよほど良いのです。気に入った快適な場所に暮らしたいと思うのであれば、こういった金銭面以外のコストも考えておく必要があるでしょう。

これから別荘や中古物件を購入して住みたいという方の参考になれば幸いです。次回は秘境のインフラ整備のお話をしたいと思います。