hatao

ケルト&北欧の笛奏者、音楽教師、音楽教材著者、楽器店経営者。 ハープと笛のhttp://hataonami.com、ケルトの笛屋さんhttp://celtnofue.com 演奏、教育、普及で音楽を広める。18年京都烏丸錦に、19年東京都ひばりヶ丘に日本初ケルト音楽専門の楽器店を開店。En한中 3か国語学習中。

スモールビジネスの生産性を高める8つの質問

こんにちは! ケルト音楽専門の楽器店「ケルトの笛屋さん」を経営している、フルート奏者のhataoです。この連載では私のようなスモールビジネスの経営に興味のある方に向けて、私の経験やアイデアを発信しています。

さまざまな年代のスタッフが集まるフラットな関係

当店は4人のスタッフで3店舗(実店舗2店と通販店)を運営しています。年齢は40代の私からちょうど5歳ずつ差があり、一番若いスタッフは20代。いろいろな年代がいることでバランスが取れていると感じています。また、年の差が大きいのですが、全員がお互いにリスペクトしあって働いており、経営者である私も含めて、上司と部下のような主従関係ではありません。お互いが必要としあっているビジネスパートナーという感覚です。

私以外の3人には役職はありませんが、彼らは店長業務をしながら「接客に強い」、「Webや映像が作れる」、「SNS運営に強い」などの個性があり、それぞれの強みや、やりたいことを生かした仕事ができていると感じています。目指すのは、少数精鋭部隊。皆決して一流選手ではありませんが、お互いの足りないところを補いあいながら、それぞれが自由に能力を伸ばしていければ良いと思っています。

進むべき方向について話し合いました

そんな私達はバラバラな場所に暮らしていますので、全員で集まれる機会がありません。そこで、先日、今後の経営方針を全員で相談するためのリモート会議を行いました。

この連載では以前にも「チームの価値観を明確にする22の質問」というテーマで記事を書きました。それは、働き方や各人のやりがいについて明確にするための質問でした。

今回のテーマ「働き方」ではなく、「生産性」がテーマ。そのために、アップデートした質問を用意しました。この質問は私達のような少数メンバーのチームはもちろん、音楽のバンドやスポーツのチームにも応用が可能だと思います。

進むべき方向性を決める8つの質問


(1)スタッフの生産性を上げるために、何をすべきですか?

(2)スタッフの生産性を上げるために、何をやめるべきですか?

労働生産性が低いと言われる我が国。低賃金・長時間労働では、せっかく起業した意味がありません。「生産性」を高めるために取り入れること、廃止することを考えます。

新たに採用することの例として、

・より効率のよい作業手順や新たなサービス
・お金を払って外注できないか?
・手書きや紙を廃止して電子データ化できないか?

廃止することの例として

・丁寧ではあるが、そこまでのレベルを求められていない作業
・高品質ではあるが、自己満足になっている作業
・慣習として続けているが、形骸化している作業

などがあります。習慣化しているために気が付かないだけで無駄はあらゆるところにあります。誰かが「やるように言われたからやっているこの作業、本当にやる意味あるのかな?」と思ったら、それは積極的に発言すべきです。

(3)どうしたらお客様の買い物の生産性(効率)を上げられますか?
(4)お客様が購買するのを妨げている要因は何ですか?

私たちは商品とサービスを販売して利益を上げています。お客様がお金を払ってくださらなければ商売が成立しません。新しいビジネスが伸びるとき、そこにはお客様の方にも生産性の向上があります。

例えばAmazonは、それまで店舗に行くことでしか買い物ができなかった消費者の買い物の生産性を高めたため、大きくシェアを伸ばすことができました。当店は、これまで個人輸入するか海外に自分が行かなくては購入が難しかった外国の伝統楽器を国内ですぐに手に入れられることによってお客様の生産性を高めています。

小売店の購買プロセスはお客様が支払いをすることによって完了するのですが、そのステップを短くするほど、お客様の生産性は高まります。「お客様が欲しいと思ったものがすぐに決まり、すぐに決済が完了する」ことが理想です。逆に、商品が多すぎたり商品説明が不十分で決断を迷わせて、会員登録や支払いが煩雑だとお客様の買い物の生産性は下がり、より生産性の高い他社に流れてしまいます。

(5)何に対して経費をもっと節約すべきですか?
(6)何に対して経費をもっと使うべきですか?

私たちはスタッフ間で売上と経費を透明化しています。経費の裁量権は私にありますが、消耗品は各自が自由に購入しています。大きな会社組織であれば社員が出張旅費を多めに請求して自分の小遣いにする不正が可能かもしれませんが、それは経費と自分の給与の関係が不透明だからでしょう。私たちは経費がかかるとその分だけ全員の報酬が下がるため、コストに対して全員がシビアになります。

一方で、経費は締めればよいというものではありません。ビジネスでは先に投資ありき。投資によって次の利益が生まれます。節約志向に走ればビジネスが先細りしかねません。何に使うかのセンスが問われるのです。

(7)より広い購買者にアプローチするために、何をすべきですか?
(8)売上をさらに伸ばす新しい製品があるとしたら、それはどんな製品ですか?

ビジネスを成立させるものは顧客と商品・サービスです。リピーター頼みでは先細りしていきますから、常に新規開拓をしていかなければいけません。しかし、やみくもに広告費を使ったり、見当違いの顧客にアプローチしてもうまくいきません。既存のお客様を大切にする一方で、潜在的な顧客に発見・注目してもらうための適切な行動を考える必要があります。

商品についても、やたらと種類を増やすのではなく商品を絞り込むことで、お客様を悩ませない、不良在庫リスクを減らす、販売の手間を減らすなど多くのメリットがあります。一方でラインナップが固定化すると飽きられてしまうため、常により良い商品、次の主役商品を探していく必要があります。弊社であれば、同じ品質の商品をOEM生産したり、卸売割引の少ないメーカーからより割引率の良いメーカーに切り替える、オリジナル商品を考案するといった行動をしています。

会議は「決める」ことが目的


当店では以上の質問について各自が文章で事前に回答し、オンラインで合議しました。こうすることで会議で発言の少ないスタッフからも含め、それぞれの立場から本音を聞くことができたと考えています。

会議は事前にテーマを決めて35分行い5分休憩を3セット繰り返し、合計2時間に収めるようにしました。会議は「意思決定」が重要ですので、枝葉の議論で時間を使わずに「決める」ことを重視しました。

「生産性を高める」とは「手を抜いてラクして儲ける」ことではありません。お客様がお金を支払ってくださるのは、商品やサービスに価値を感じるからです。その価値をいかに高めるのか? がビジネスの生産性を高めるということだと考えています。

以上参考になれば幸いです。それではまた次回!