史佳

新潟出身の三味線プレイヤー。9歳より津軽三味線の師匠であり母でもある高橋竹育より三味線を習い始め 2000年よりプロ活動をスタート。新潟を拠点に国内外で演奏活動を行ってきた。古典を大切なベースとしながらも、伝統芸能の枠を超えた新しいニッポンの音楽を目指し、現在、ニューヨークを拠点に移し三味線芸術の新しい境地を開拓している。 YouTube公式チャンネル :https://www.youtube.com/channel/UCDcEsCsEsKHs6Oyv-i83Nfw

守破離(しゅはり)とは・・・

2024年初ライブは、能楽堂で開催された。
この「撥一閃」ライブは、去年からシリーズ化していて、聴く人にとっても、舞台に立つ私たちにとってもまさに、”三味線”の真髄に集中できると言っていい特別なライブである。
新潟高橋竹山会皆伝者との合奏が前半を飾り、後半は師匠である高橋竹育との親子共演が最大の見どころだ。
皆伝者たちは、前回以上に熱心に稽古を重ねてきていた。
竹山会で学ぶ曲は通常、譜面に忠実であるが、私の独自の演奏スタイルとは異なる。
皆伝者は私の演奏の手を譜に起こし、徹底的に研究していた。
そうした絶え間ない努力が実を結び、全員が同じ手で披露した合奏は見事に調和し、圧巻であった。
皆伝者の中には芸歴40年にもなる者もいるが、彼らのそうした更に高みを目指す姿勢というのは、私自身もまた成長させてくれる。
演奏後の彼らの笑顔からは、共演の喜びが溢れ出ているのが伝わり、それは私にとっても大きな喜びであった。

もう一つの見どころである親子共演では、親子の息の合った演奏が実現し、まるで三味線の音で会話をしているかのような掛け合いを、楽しんでもらえたと思う。
毎回演奏する親子二重奏でも、これまで一度も同じ演奏をしたことはない。
まさに、本物の即興演奏である。


私も常に新しい表現をステージ上で模索し、演奏中に手を動かしながら、その場の感覚に従う。
この瞬間が、スリリングでエキサイティングなのである。
古典曲は私の真骨頂であるが、その魅力を存分に伝えることができたと感じている。
今回初めて三味線演奏を聴いたというお客様も多く、ライブ後のロビーで、嬉しい感想を伝えてくれた。

今年で芸歴40年を迎えるが、少しずつ三味線がわかってきたという思いである。
その奥深さを実感し、答えのない道を歩んでいることを改めて感じている。
まだまだこれからの三味線人生が楽しみである。

守破離(しゅはり)という言葉が伝統芸能には、よく使われる。
まず大事なことは型を守り、そして次にその型を破って新しい自分の型を見つける。
最終段階とされる「離」は、その芸道の本質を理解したうえで、自分自身の独自の芸術域に至るというものである。
芸道40年、今自分がどのあたりにいるかは分からないが、これからもこの意識を常に持ち続けていたい。