hatao

ケルト&北欧の笛奏者、音楽教師、音楽教材著者、楽器店経営者。 ハープと笛のhttp://hataonami.com、ケルトの笛屋さんhttp://celtnofue.com 演奏、教育、普及で音楽を広める。18年京都烏丸錦に、19年東京都ひばりヶ丘に日本初ケルト音楽専門の楽器店を開店。En한中 3か国語学習中。

挫折を乗り越えて韓国語の学習を再開|コロナ禍で冷え切った語学熱が再燃(2)

こんにちは!

ケルトの笛奏者で、ケルト音楽専門の楽器店「ケルトの笛屋さん」を経営しているhataoです。この連載では、スモールビジネスを営む私が起業やビジネスについてアイデアと経験をみなさんとシェアしています。

前回は語学学習をテーマに、私の中国語学習法について書きました。今回は韓国語学習での経験から、語学学習の挫折と再開するまでのエピソードを書いてみます。

第三外国語の韓国語

中国語で中上級資格のHSK5級を取得した頃から、さらにもうひとつの言語を習得してみたくなりました。音楽家としてアイルランド音楽に取り組んできた私ですが、旅行先はアジアが大好き。特にアジアの食文化に興味があります。アイルランド音楽は近年アジア圏でも人気があり、韓国にも愛好家が多くいます。それなら、韓国でレッスンやコンサートをすることを目標に韓国語をやってみたら良いのでは?

初めてソウルを訪れると多くの友人知人ができました。みな音楽仲間です。このことをきっかけに韓国語を学ぶことを決意しました。漢字を使う中国語とは異なり、韓国語学習にはハングル(朝鮮文字)を覚えなくてはいけないという最初のハードルがあります。ハングルがわからないことには、韓国のレストランや駅でとても不便です。そこでハングルの読み書きから覚えました。音がわかるようになると、まったく謎の文字だった看板や広告のハングルに日本と同じように漢字や外来語があったりすることがわかり、親しみを覚えました。

ハングルが読めるようになると次に旅行会話の語学書を学び、やがて初級のテキストを使った韓国人講師との個人オンライン・レッスンを始め、王道とも言える学習スタイルに入りました。よく言われるように、韓国語の文法や言い回しは日本語とそっくりで驚きました。学習を始めて1年たった2019年、ほとんど話せないような状態で私は無謀にもソウルの延世大学に語学短期留学を決行。若い日本人学生と同じクラスで多少「浮き」ながら、1ヶ月韓国語学習に没頭し、あちらで生活しながら韓国人の暮らしぶりを知りました。

韓国語の発音は中国語に比べるととても楽です。中国語は前回にも書いた子音や母音の発音の難しさに加えて、声調が何よりも大事で、声調を間違えるとまるで通じませんが、韓国語はその点ではカタカナで書いたものを読んでもある程度は理解してくれます。もちろん発音は正確であるに越したことはないのですが、少しでも通じるとますます楽しくなってきます。また韓国はエンタメが盛んで、映画やドラマが韓国語で多少理解できるようになると、その作品をより深く知ることができるように感じられ、学習が捗りました。

挫折と中断

韓国には年に1度2度行く程度でしたが韓国語学習への興味は持ち続け、日本の検定試験「ハングル検定」を中級レベルの3級まで取得しました。しかし2020年にコロナ禍がやってきました。韓国旅行ができなくなり、また同時に韓国人の中で最も親しかった友人と金銭トラブルがあり、私は韓国に対する興味を急速に失いました。

使いようのない韓国語を学んでも仕方がないのではないかと思い、一時期はあれほど好きだった韓国ドラマも見なくなり、韓国語のことを思い出すこともなくなりました。

これらのこととは別に、私は韓国語学習に挫折感を覚えていました。ひとつはハングルのスペリングが覚えられないことです。ハングルの仕組みはとても合理的なのですが、綴りは複雑で、何度も書かなくては覚えられません。私は耳学習と講師との会話がメインで、聞くことと話すことは得意ですが、読み書きは苦手でした。

もうひとつは活用形です。動詞や形容詞が活用しない中国語とは異なり、韓国語は日本語と同じようにすべての動詞や形容詞が活用します。また日本語と同じく様々なタイプの活用があり、正確に覚えなくてはいけません。ここがとても難しく、いつも間違えていました。

こういったことは初級のうちにしっかりと学習時間を取って覚えておくべきなのですが、ながら学習でリスニングばかりしてきたツケなのです。

挫折を乗り越えて

2019年の留学から5年、ほとんど韓国語に触れず韓国旅行にも行かなかった私は、あれほど頑張ったのにどんどん韓国語の記憶が失われることを苦しく思いながらも、再開するきっかけを見つけられずにいました。

しかし今年、大ヒットドラマ「梨泰院クラス」の視聴をきっかけに再び韓国ドラマを見始めるようになり、意外に聴き取れることがわかり、私の韓国語力は完全には失われていなかったことに驚きました。一度定着したものはなかなか忘れないものなのです。昨年のうちに友人との金銭トラブルは解決し、再び交流が始まりました。そんなおり、今年の秋にソウルでアジア全域の愛好家を集めてアイルランド音楽のイベントを企画したいとソウルの知人に誘われ、久しぶりに韓国を訪れる気持ちがわいてきました。

これから半年。この期間に、あちらで楽器のレッスンができる程度まで上達させたい。これが今の目標です。

学習はいつでも、何度でも始められる

SNSでは時々、語学学習の天才のような人を見かけます。インターネットの世界では韓国語を1年間でトップクラスまで上達させた人や、複数の言語をネイティブレベルで扱える人など珍しくありません。もちろん才能に加えて血の滲むような隠れた努力があるのでしょうが、そのような怪物と自分を比べて落ち込む必要などないのです。

楽器の世界でも短期習得者はいます。しかし、私は語学学習も楽器練習も、上達スピードではなく最後まで続けた人が笑う世界だと思います。続けていれば着実に進歩しますし、遅い進歩でも振り返ってみると驚くような変化があるものです。中級で足踏みしている私ですが、韓国語力がゼロだった頃から考えるとドラマの韓国語が聞き取れるようになるなど、昔は想像もできませんでした。どんなに遅い歩みでも10年続けていたら、かなりできるようになっているでしょう。もし10年後に新しい言語を1つ習得しているのだとしたら、それはやってみる価値のあることではありませんか? 私はまだ40代なので、そう考えるとあと2つ、3つの言語を習得する余地があるのです。

長い中断ではありましたが、今ならまた楽しく学べるような気がしています。