hatao

ケルト&北欧の笛奏者、音楽教師、音楽教材著者、楽器店経営者。 ハープと笛のhttp://hataonami.com、ケルトの笛屋さんhttp://celtnofue.com 演奏、教育、普及で音楽を広める。18年京都烏丸錦に、19年東京都ひばりヶ丘に日本初ケルト音楽専門の楽器店を開店。En한中 3か国語学習中。

海外旅行は辛いことばかり。それでも旅に出よう。

こんにちは! ケルトの笛奏者で、ケルト音楽専門の楽器店「ケルトの笛屋さん」を経営しているhataoです。この連載では、スモールビジネスを営む私が起業やビジネスについてアイデアと経験をみなさんとシェアしています。

普段はスモールビジネスについて書いている連載ですが、今回は5年ぶりにヨーロッパを旅した経験から感じたことをシェアしたくなりました。

今回は2週間の予定で、フランス北西部のブルターニュ地方とトルコのインタンブールに滞在しました。フランスはフルートのレッスンを受けに、トルコは観光です。私は学生時代からおよそ2年に1回のペースでヨーロッパを訪れており、さまざまな国を旅してきました。

海外旅行は贅沢だというイメージがあるかもしれませんが、私の旅のスタイルは滞在型です。良いホテルに泊まったりグルメを堪能したり次々と観光地を巡るというよりは、その土地に数日間でも滞在して、土地の人々が食べる安食堂で食事をして、できれば地元の人と交流するという、違う街に暮らす擬似体験を楽しんでいます。そのため旅費は抑えて、少しでも長く滞在しています。

仕事をしながら旅行する

私が滞在型の海外旅行にハマったのは学生時代。好奇心が旺盛なので異国の文化に触れたい思いが強く、ツアーパッケージでは見えてこない現地の暮らしに興味がありました。そのためには長めの日数が必要です。しかし、就職する長期の休みはままなりません。就職せずにフリーランスを選んだのは、長期旅行がしたかったことも理由の一つです。

一般的には旅費を日本で稼ぎ、旅先では使うばかりとなります。しかしそれでは気軽に旅行に行けません。そこで、旅行中も仕事ができないか? と考えて旅先でもできる仕事を作ってきました。

私はフルート奏者で楽器店の経営をしています。音楽家としては、旅先の知人を頼ってコンサートやレッスンをすることがあります。楽器店の仕事は、スマホとMacBookがあれば旅先でもお客様や業者とのやりとりや国際送金が簡単にできます。

このように仕事をしながら旅行するスタイルを20年くらい続けていますが、この間のIT機器の進化は目覚ましいものでした。2000年代は旅先で無料のWifiを探したり、インターネットカフェで日本へのメールを書いていたりしたものです。10年代になるとSIMカードやレンタルWifiが利用できるようになり、今はどこの国に行ってもスマホで4G回線を使ってテザリングができますので、日本にいる時と変わらない環境が手に入るようになりました。旅行中は3時間くらい仕事をして、あとは観光したり楽器を練習したりとのんびりと過ごす日々です。

最近は会社員でもリモートワークが普及して、出社しなくても仕事ができる人も多いようですから、もしかしたら海外旅行や海外生活をしながら日本での仕事ができてしまうかもしれません。

トルコの街並み

旅はしんどいことだらけ

 私は旅行パッケージを海外旅行や高級な旅行をしたことがありませんので、自由旅行での経験からお話をします。

旅行はしんどいことばかりです。まず、重たい荷物を運びながらの長時間の移動は肉体的に堪えます。フライトはきゅうくつですし、日本との時差や気候差で体調が狂うこともあります。英語や現地語で意思疎通をしなくてはいけません。スリや置き引きなどの犯罪リスクもありますので気が抜けません。食事は食べ慣れませんし口に合うかもわかりません。現地での習慣の違いでトラブルに遭ったり、我慢しなくてはいけないことも多いです。海外は買い物が不便で、品物も日本のものほど良くないこともあります。そして何より、お金をたくさん使います。

その反面、海外に来ると日本は本当に素晴らしい国だと気づきます。食べ物は安く美味しく、便利で、交通事情が良く、質の良い品物にあふれ、人々はおおむね誠実で正直です。外国人がたくさん日本に押し寄せる理由がよく分かります。

実は今回のトルコ旅行でも大変な目に遭いました。
帰国の日に朝、宿を出てみたら都心が交通封鎖されておりバスも地下鉄もすべてストップ。その日は5月1日、メーデーの日です。トルコではメーデーがしばしば過激になることがあるため、あらかじめ首都機能を封鎖するのだと後で知りました。重たいスーツケースを3km以上ひきずってほうぼう歩きまわり、まったく英語が通じない運転手の白タクを捕まえて、大金を支払ってなんとか時間までに空港に行くことができたのでした。

私は旅先でこのような大変な目に遭うと、「なぜお金を払ってまでこんなにしんどい思いをして旅行しているんだろう……」と愚痴をこぼしたくなります。旅行がうまくいけば「楽しかった」で済むのですが、トラブルがあって辛い思いをすると、「もうしばらく旅はしたくない」と思うこともあります。それでも、また旅の魅力に惹かれて、旅に出たくなります。

旅で成長する

そんな辛い旅行でも私が惹かれるのは、旅は成長に必要な学びや経験をもたらしてくれると考えているからです。

語学力、言葉の通じない相手と意思疎通をするコミュニケーション能力、トラブルに見舞われた時に慌てずに事態を切り抜ける対応力、計画を立てて準備をして計画を遂行する能力、予算を立てて効果的に使う能力、異文化と多様性への理解など。

人間性においては、自己管理能力が高まるほか、旅先で人に助けられることによって、自分も人を助けられる人間になりたいと思うようになります。さまざまな試練を克服することは、自信にもつながります。

こういったことは、若いときに多少苦しい旅をすることでより成長が実感できると考えています。歳を取ると肉体と精神の両面で衰え、ついついお金を使って楽をしたくなるものです。高級ホテルに泊まり日本食を食べて日本のテレビ番組を見ているのでは、日本にいる時と全く変わらなくなってしまいます。

私は外国の音楽(ケルトや北欧の伝承音楽)を演奏していますので、日本に留まっていると自分の偏見や慢心が強くなるように思い、たびたび海外に出かけて演奏家と交流したり、レッスンを受けたりコンサートを見たりすることで刺激を受けて自分をリセットしています。今回の旅行では、自分が音楽家として今後進むべき方向性をつかむことができました。それは、日本にいては何年かかっても得ることができなかったアイデアでした。それだけでも、お金を使って海外まで来た甲斐がありました。

円安で苦しい状況ではありますが、自己成長のために必要だと思うのであればぜひ旅行をしましょう。きっとそれは成長につながるはずです。