ユカリがやってきたのは天気のいい初夏の夜だった。
僕はユカリが家に来るのを今か今かと待ちわびていた。
ーーー
学芸大学駅から祐天寺へと向かう高架下だった。
その日僕たちは五本木あたりのカフェでコーヒーでも飲みながら打ち合わせをしようとしていた。
歩きながら、ふと道脇をちらりとみた。
それは確実に一目惚れだった。
カフェの向かいの花屋の店先に、ユカリはこちらを見ながらたっていた。
どちらかというと、姿勢はよくはなく、重心が少し偏っているように見えた。
「今夜、八時十五分ごろ、伺いますね。」と言った。
「今日の今日で大丈夫なんですか?」僕は少し驚いて言った。
20時を少し回った頃、ブゥブゥと電話のバイブが鳴った。
「もう、近くにいるので、伺いますね。」
玄関にユカリが着き、僕はユカリを抱き上げて、窓際に行った。
ユカリがいると、部屋の中が何ケルビンかパッと明るくなった感じがした。
殺風景な部屋に、潤いを与える観葉植物のようだった。
いや、観葉植物だった。
そしてその日からユカリは僕の家の窓際にいる。
Shingo Kurono