hatao

ケルト&北欧の笛奏者、音楽教師、音楽教材著者、楽器店経営者。 ハープと笛のhttp://hataonami.com、ケルトの笛屋さんhttp://celtnofue.com 演奏、教育、普及で音楽を広める。18年京都烏丸錦に、19年東京都ひばりヶ丘に日本初ケルト音楽専門の楽器店を開店。En한中 3か国語学習中。

ニッチなジャンルで小売業を始めるときの、仕入先の探し方

こんにちは! 国内でただひとつ、ケルト音楽専門の楽器店を経営しているケルトの笛のhataoです。

今回は私が店舗営業を始めた際にどうやって商品の仕入先を探しているかについてお話をします。

最初は1本の笛の通販から始まった

私の楽器店は、「ケルトの笛屋さん」の屋号のとおり、ケルト音楽で使われる管楽器の専門店として9年前にネット通販で営業を開始しました。

最初の数年は単価1000円程度の「ティン・ホイッスル」を中心に低価格帯の商品で業績を伸ばし、高級ハンドメイドの笛に価格帯を広げ、2018年に初めて京都に小さなスペースを借りて、実店舗の営業形態に進出しました。

実店舗を開業するにあたっては「日本では珍しい各種ケルト音楽の楽器が試奏できるお店」をコンセプトにすべく、その取扱商品をハープなどの弦楽器、打楽器、アコーディオンなどの蛇腹楽器へと一気に広げることを思いつきました。

しかし私はもともと笛吹きです。ケルトの笛のことであれば日本の第一人者を自認していますが、他の楽器には触ったこともなく、また自分の手で演奏をしてみようという興味もありませんでした。そのためどんな楽器があり、どうやって仕入れたら良いのかさっぱりわかりません。その上に開業の話しは急にまとまったので、これから仕入先を調べて輸入するには時間が足りません。

それなら直接買い付けに行けばいいと軽く考えて、開業の話が出てきた頃に計画していた2ヶ月のヨーロッパ旅行の中で、各国の楽器店や楽器職人を訪ねるためのプランを立てました。

この旅行では9か国をまわり、各地の伝統音楽と楽器について学び、小さな楽器店やCD店を周ってCDと書籍の仕入先との商談をまとめることができました。また楽器の陳列方法や管理方法についても少しは知ることができ、量産品はOEM加工で自社ブランドとして販売しているという楽器業界の事情も知ることができるなど、自分にとっては大きな成果を得ることができました。

アイルランドの楽器店の視察

ヨーロッパで商品買い付けをと期待していたのですが、実際に注文できたのはCDと書籍のみ。途方に暮れていた折、良いめぐり合わせがありました。私の先輩ミュージシャンが、副業として経営していた楽器の通信販売業を縮小するということで、在庫や取引先を私に引き継いでくださることになったのです。

その先輩から、何年も売れ残っている商品やボロボロの古い本や私物のCDなどのすべての在庫を引き受けることを条件に、仕入れ値程度でまとめて買い取りました。

こうして開店初日には無事にすべての棚が良い感じに埋まり、とりあえずお店としての格好が付きました。しかし初期の在庫もいずれは尽きますから、そうなる前に自分で仕入先を探さなくてはいけない状況は同じでした。

開業当日。右が私で左はスペースの貸主。

仕入先を探す

楽器店の仕入先として、クラシック音楽で使われるような一般的な楽器であれば、通常は問屋を通すかメーカーから直接商品を仕入れます。

楽器業界では定期的に見本市が開かれており、メーカーが出展して最新の商品ラインナップを実際に見て選ぶことができます。この仕組を利用すれば、小ロットであっても簡単に仕入れができるはずです。

しかしケルト音楽の楽器は市場規模が小さく、日本のヤマハやカワイのように工場で大規模に生産しているわけではありません。楽器メーカーは零細企業が多く、個人で製作していたり音楽家が暇な時期の副業として製作している場合も多いのです。

そこで、まずはメーカーを知ることから始めなくてはいけません。ネットでの検索はもちろん、人に素直に教えを請うことから始めました。

共演しているプロ・ミュージシャンやセッションで出会うミュージシャンにどんなメーカーがあるのか、どんな種類があり、価格帯はどうか……と訊いて回りました。そうすると、「このメーカーは安いけど壊れやすいよ」「このメーカーは待ち時間が長いよ」など色々な情報を得ることができました。

今はネットで簡単に検索してメーカーを探し当てることができる時代です。すぐにメールを送り、取引条件について問い合わせました。こうして、ようやく現在の仕入先との交渉が始まりました。

もしこれから小規模の小売業を始めようとしている方がいましたら、問屋がないような商品の場合は製造元を探し当てて、私のように直接取り引きをもちかけてみてはいかがでしょうか。その際には、その商品に関するレビューや愛好家のブログを読むなど、実際に商談を始める前にしっかりと情報収集をすることをおすすめします。

本日はここまでとします。今後また商売に差し支えのない範囲で仕入れ方法についてお話をするつもりです。