こんにちは!今日は以前から僕がたびたび話題にしている寿司のブランドについて紹介します。
メゾン寿司の公式サイトがオープンしました!→ MAISON SUSHI
最初期の寿司たちはプリントや染めによるアイテム
少し遡り、2015年にPARCOさん主催の「寿司グッズ」テーマのポップアップストアに誘っていただき、この企画に向けた限定アイテムを作ったのがそもそものきっかけでした。特設ページはこちら。
渋谷、福岡、成田空港のPARCO店舗で展示&販売していただき、ネットニュース等で話題になったのもあり作るのがたいへんでした……
当時は全てプリントと染めによるアイテムで、カラフル&チープな路線で制作していました。
…と、ここまでが2015年のもの。
現在取り組んでいるのは、プリントではなく「織物」で作った寿司たちです。
富士山テキスタイルプロジェクトとの出会い
僕が在学中の東京造形大学では、鈴木マサル教授指導のもと「富士山テキスタイルプロジェクト」という産学協同プロジェクトが行われています。なんと今年で10年目!
織物で栄えた山梨県富士吉田市の機屋さん(織物を作っている工場/会社のことです!)と大学院の学生がタッグを組み、何か面白い作品を作りあげよう!というものです。
このプロジェクトでは、よくある産学協同プロジェクトとは違い、それぞれの学生がインターンのように現地に通います。機屋さんの中に入り、時には自分で機械を操作したりして二人三脚で作品を作り発表していくんです。
元々は地域の活性化に繋がれば、と始まったプロジェクトですが、今では御朱印帳やおまもりぽっけの「kichijitsu」のようなヒット商品が生まれたり、現地の機屋にそのまま就職する学生が出てきたりと強い熱量のもと盛り上がってきています。
僕もこのプロジェクトに参加するにあたり、何を作ろうか考えました。そしてたまたま見つけた「山梨県は人口当たりの寿司屋の数が日本一」「マグロの消費量も全国トップクラス」というデータ。これはもう寿司を作るしかない!!
今までのプロジェクトは「いいものを作る」ところまでで終わることも多く、僕は作ったものを売る戦略、運用までを自分の手でやりたいという思いを伝え、田辺織物さんとの寿司作りが始まりました!
難航する「織物」による寿司作り
さて、身近なもののうちどれが織物か?と聞かれて答えられる人は案外少ないのではないでしょうか。Tシャツ、スウェット、ジャージなどは「編み物」、襟付きのシャツやデニム生地などが「織物」です。
編み物は言ってしまえば手編みのマフラーのような構造です。伸縮性があり、ふわふわしている。織物は縦横に糸が交差しているためハリがあり、(基本的には)伸びない生地です。
これが布を織る機械。ジャガード織機です。下の写真の白い糸が「経糸(たていと)」という文字通り縦の糸。ここに「緯糸(よこいと)」という横の糸を織り込んでいき、色や模様を出していきます。
今回タッグを組んでいる田辺織物さんは老舗の座布団メーカー。普段はこのような「金襴(きんらん)」と呼ばれる、法事用の座布団や旅館用の座布団を作っています。(楽天に田辺さん直営のショップがあるのでぜひみて見てください。)座布団はたや 楽天ショップ
織機はかなり昔の機械。この歯車を替えることでギア比が変わり、織物の密度をコントロールできます。どの布にどの歯車を使うかは職人の世界!「この布はこれでいってみよう」と即座に取り替えを行います。
プリントで作っていた頃のデータをそのまま織ってみた最初のサンプルがこちら。のっぺりしてしまって、織物の良さが出ていませんね……。ここからやるのは大きく3項目。
「原画の修正」織りに適したイラストを描き直します。
「組織の修正」織り方にもたくさんの種類があり、それぞれの線、面に適切な組織を入れて、どうすれば寿司らしくなるかを考えます。
「糸の選定」コットン、ポリ、色をどう混ぜ合わせるか?といった要素で発色や質感が変わります。
一般的に織物は「雰囲気のある質感か」「発色が綺麗か」がポイントであり、「寿司の質感や色を再現できるか」というテーマで布を作っている人はいません。こうなると完全に手探りの世界です。
鈴木マサル教授、産地のプロデューサーである高須賀活良さんにアドバイスを求めると、「プリーツなどの仕組みを応用してシャリを膨らませることができるのでは?」とのこと。
そこから細かい調整やテストを繰り返して、サンプルを何度も作りました。
いよいよ寿司らしい生地へ
できました!!!どうでしょう、これはかなり寿司らしいと思いませんか!?
お米の部分はコットンを使うことでふっくらした質感に。そして、ネタの部分は光沢感のあるポリの糸を混ぜ合わせ刺身の質感を作りました。
そしてさらに!
写真では分かりづらいかもしれませんが、このシャリ、特殊加工により膨らんで立体になります。
こちらのサンプルは名刺入れ/カードケース。取り出したとき、会話のネタになること間違いなしです。寿司の質感を織物で再現したのは世界初の試みだと思います。というか最初で最後かな……笑
今は量産に向けて大量に織っても詰まらない構造にする、厚みを増して耐久性を高める、など細かい部分の調整をしているところです。これがなかなか難しい!
寿司作りの背景
一般的にジャガード織りには、「紋紙(もんがみ)」「パンチカード」と呼ばれる型紙が必要です。これは印刷でいう版であり、鋳造でいう金型であり、先ほどお見せした大量の糸たちを制御して「どこをどう織るか」決めるためのものです。
1つの布を作るのにこのカードが何千枚と必要になり、何種類も作るとなるとこのカードだけで数百万円かかってしまいます。。
「綺麗な柄」を目指すのであればこの方式でも問題ないですが、「このシャリのツヤ感がなんか違うんだよな…」と思うたびにこのカードを作ったのでは半年も経たずに破産してしまいます。
ではどうやって寿司を作っているのか?というと、
はい。僕はこれ10年ぶりくらいに見ました。フロッピーディスク。これに、先ほどのパンチカードに相当する情報を入れていきます。
ただし、デジタルになったから全自動で楽にできる!というわけではありません。要は先ほどのデータを自分で作成して入力していくわけです。
これを……入力……
調整していくうちにどの米粒にどのデータ入れたっけ!?と混乱してきたり相当試行錯誤しました……。
パッと見はおもしろグッズのような生地ですが、いい大人たちが本気で2年かけて準備してきました 笑 この糸も富士の湧水で染めたもの。縫製、パッケージに到るまで全行程を山梨と東京で行なっています。
普段アパレルの仕事もしていますが、今はデータだけ投げればすぐに製品サンプルが上がってくるような時代です。単純な製品のクオリティだけで言えば海外生産と国内生産の違いはほぼなくなってきています。国産にこだわる必要があるか?と思うことさえあります。
海外生産と国内生産の一番の違いはコミュニケーションの密度だと思っています。
海外の場合は要望が伝言ゲームになってしまって上手く伝わらなかったり、早い段階で割り切ったりしなければならない事も多々あります。今回のブランドは、田辺織物さんとの二人三脚でしか実現できなかったものです。
田辺さんからすると、普段は座布団を作っている会社なのになんでこの子は寿司の名刺入れを作りたがってるんだ……?という思いもあったかもしれません。笑
しかし一緒に吉田うどんを食べたり、火祭りに行ったり、桜の名所に連れて行ってもらったり……色々な話をするうちに打ち解けて、今では田辺さんの方から「この作り方だと綺麗にお米が膨らむかも!」と提案がきたりもします。
代表の田辺丈人さん(織物ブログ更新中です!)
田辺さん、本当にありがとうございます!いいブランドにしていきましょう。
「メゾン寿司」はハタフェス2018で先行販売!
ハタオリマチフェスティバル 2018 in 富士吉田
2018年10月6日、7日に行われる「ハタフェス」にて、名刺入れとサコッシュを先行販売します。ハタフェスについてはこちらをご覧ください。
※初回ラインナップはマグロ(赤身)、マグロ(トロ)、サーモンの3種を予定しています!
機織の町、富士吉田に7000人以上が集まるビッグイベントです!今年は富士吉田プロジェクト10周年ということもあり、気合の入った展示になりそうです。
工場見学のほか、ライブ、展示、販売、出店、etc…テキスタイルやものづくりに興味がある人は必見のイベント!富士山観光がてら、ぜひ遊びにきてください!
本格的な販売は11月頃を予定しています。
僕と田辺さんも寿司職人の格好でお待ちしております!
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鈴木龍之介(スズキリ)
1993年7月7日生まれ、テキスタイル育ちのデザイナー。アダ名はスズキリ、屋号はネクトン。
釣りと魚が好きすぎて、寿司のブランドを立ち上げ中。
Twitter https://twitter.com/suzukiri_s
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