Tsutomu Sato

スポーツイベントプロデュサー /「楽しい場所をつくりたい」と想い続け5千人を盛り上げるショーから1万人集まるイベントを企画運営しています / スポーツビジネスコミュニティ #SAC 運営中 / 山梨・東京で2社経営 / 企画やプランニングでご飯を食べてます / Twitter:@2tomman

大きな「スポーツイベント」も「少人数の熱量」からはじまる – 後編「企画実行編」-

前回の記事、”大きな「スポーツイベント」も「少人数の熱量」からはじまる”の前編では「起案編」として、どのようにイベントが起案されるか?ということを書きました。

大きな「スポーツイベント」も「少人数の熱量」からはじまる – 前編「起案」-
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今回は後編の記事「企画実行編」です。

スポーツイベントの3つのステップ

内容を振り返りますと、
スポーツイベントは以下3つのステップがあります。

1. どう話を進めた or どう持ち込まれた?「起案編」

2. 開催が決まるまで、どんな課題があった?「企画編」

3. 準備を進める過程で、どんな課題が生まれたか?「実行編」

そして、前回は、上記の1「起案編」について掘り下げ、今回の後編では「企画と実行編」と題し、2.企画と3.実行について触れてみます。

■ 2. 開催が決まるまで、どんな課題があった?

公園を利用した子供向け大規模イベント「アクティブキッズフェスタ」

まずは、「アクティブキッズフェスタ」について。公園を利用した子供向けの大規模なイベント実施の前例がなかったため、東京都や公園管理事務所、ビル管理会社等々との協議が必要でした。
特に、重要なのは安全性の話。それから運営の資金獲得の話。いかにして会場内で安全を担保していくのか。そのためのオペレーションをどうしていくのか。そして、どうやって運営資金を確保するのか。そうしたことが事前の課題であり、長期間に渡る協議が必要でした。
文字で書くとシンプルですが、それぞれが大きな課題であるため、協議を重ねるたびに少しずつ進展し、交渉開始から5ヶ月でようやくGOサイン。イベントから逆算して3ヶ月前に募集スタートという流れでした。

協議開始から5ヶ月という時間軸が早いか遅いかは置いておき、決め手になっていたのは、この有明エリアにて集客をしている商店会のような組織が立ち上がったばかりであり、有明エリアのにぎわいの創出に向けて考えられていたことでした。

また、2014年の春の段階の構想で、東京五輪を契機として、有明エリアが2020年に向けてスポーツの集積地になる方向性があったため、スポーツイベントを行う場所として適しているのではないか?という提案も受け入れやすい土壌があったと思っています。

出張型BMXショー「 #空飛ぶチャリ AIR TRICK SHOW 」

もう一つ紹介するのが、こちらの出張型BMXショーである「 #空飛ぶチャリ AIR TRICK SHOW 」を国内で初めてショッピングモールの中で開催するという話です。


(Photo by May Nagoya / #空飛ぶチャリ AIR TRICK SHOW)

ショッピングモールの中での「AIR TRICK SHOW」の開催までのハードルは、こうしたショーの日本国内での開催例がないことが大きな課題でした。

中でも、特に大きな課題になったことは、3の準備を進める過程で触れてみます。


(Photo by May Nagoya / #空飛ぶチャリ AIR TRICK SHOW)

■ 3. 準備を進める過程で、どんな課題が生まれたか?

交渉開始から5ヶ月でようやくGOサイン

アクティブキッズフェスタの1回目に関しては、上記の通り、交渉開始から5ヶ月でようやくGOサイン。イベントから逆算して2ヶ月前に募集スタートという流れ、かつ1回目の実施ということで、準備オペレーションのための時間、コンテンツ確保のための時間、スポンサー獲得のための営業の時間を十分に取ることができませんでした。そのため、当初想定していたよりも小さなサイズでのイベントとなってしまいましたが、運営に必要な資金にも目処がついたことで、実現に至りました。

関係各所への調整・申請

特に、行政の公園をお借りして行う場合には方々への調整が困難を極めます。

アクティブキッズフェスタの場合には、共催するチームに加えて、公園の持ち主である東京都(港湾局)に加え、公園を管理している会社、そしてその公園の保全を担当する(実質的な公園管理者)、警察、消防のそれぞれに申請なり、届出が必要となります。こうした行政の公園にて実施するイベントは、これらの申請に関して全てのGOサインがあって開催することが可能となります。
どこか設営物に課題があれば、その部分をその公園のルールに沿って修正する必要がありますし、企画していく上で、ここに電源が必要だ。水が必要だ、どこから水を引っ張る、排水はどうする?などなど公園のルール、設備も鑑みながら、イベント遂行に向けて、それぞれの課題をクリアしていく必要があります。

その場所に応じて課題となることは変動すると思いますが、特に緊急時の対応の部分などには配慮して計画を立てていきます。

ショッピングモールの中でのBMXジャンプショー「AIR TRICK SHOW」実施に向けた課題の3つ

a. 安全に遂行できるか?
b. aにも繋がりますが、防火シャッターを潜る部分の設置物をどうするか?
c. 周辺ショップに迷惑がかからないか?

a. 安全に遂行できるか?

上記の3つなら、一番の課題は特に1つ目の「安全に遂行できるか?」ですね。普段、屋外で行うことが多いショーですから安全への視点は屋外よりも大切なポイントになります。

どのような対策をしたのか。このショーで気をつけるポイントは、ライダーの進行する場所(ジャンプをして飛んでいく方向)に関しては、物理の原理でジャンプで進む方向、かつジャンプ台から放射線状の観客の配置に関して気を遣う必要があります。逆にいえば、その方向と放射線状さえしっかりと安全確保ができれば、大きなリスクは物理的に生じません。これを把握した上で、設営、配置を行うことで「安全に遂行できるか?」がクリアとなります。

b.  防火シャッターを潜る部分の設置物をどうするか?

これは、ショー自体というよりも、災害・火災時に閉じる防火シャッターの下を潜る場所をどうするのか?という問題です。ちゃんと説明しますと、ショッピンングモールなどの大規模施設には、必ず防火シャッターがあります。防火シャッターとは、その名前の通り、火の延焼を防ぐ目的で使われますが、それに加えて、火災時に煙を封じ込める目的で大切な設備です。建物内に、煙のまわりを防ぐために、火災時に一刻も早く防火シャッターを閉じる必要があるのです。

そのため、そのシャッターが降りる部分に、何かの設営を行うことができません。

どう設営してもその下を潜る必要が出てきたため、どう対策することにしたのか。ジャンプに向けた自転車の助走部分の設営では、防火シャッターが降りるところには何も設営物を置かず、その部分にスタッフに立ってもらい、観覧客の方が走行路に侵入しないような対策を取ることになりました。

c. 周辺ショップに迷惑がかからないか?

これも大切なポイント。ショッピングモールさん側としても、こうしたショーの実施を受け入れてくださる真の意味としては、集客やショッピングモール内の購買に繋ぐため。こうしたショーを行うことで、ショーの周辺エリアのショップさんの売上が下がってしまっては本末転倒です。

どう対策したのか。ショーを行う直前から走行路をつくること。走行路の幅を極力細く(幅を狭く)設営し、ショー中に両側のショップへの行き来や通行を妨げないように設計しました。

このように、イベントを実際に準備を進める過程で、さまざまな課題が生じてきます。

イベントによっては、開催が決まるまでの検討段階の課題で実施が不可になるケースもあれば、実際に足を動かして動いていく段階で課題をクリアできずに実施に至らないケースもあるでしょう。


(Photo by May Nagoya / #空飛ぶチャリ AIR TRICK SHOW)

実行に向けて、そこをクリアできなければ実施できないような課題の場合、当然ながらそこをクリアしなければ前に進めません。一つ一つの課題を、着実に向き合って、それらをクリアしていくことが求められるのです。

以上が、大きな「スポーツイベント」も「少人数の熱量」からはじまる – 後編「企画実行編」- でした。