さなえごはん

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旬の食材練習帖「真鱈子」-2023冬編-

「これ、どう調理するんだろうなぁ」と思いながら、売り場をスルーしているうちに見かけなくなる、季節の食材ってあります。

冬の今は、これ。

どどん。真鱈の子。

「たらこの大きいやつだろうなー」とは思いつつ、このインパクトある見た目の迫力に負けて買ったことはありませんでした。

勝手にシリーズ化している「食材練習帖」の「冬版」を機会に、いざ挑戦。

 

「たらこ」は2種類あるらしい

調べてみると、この「インパクトVer.たらこ」は真鱈の卵で、スーパーでよく見る味付きの「たらこ」はスケトウダラの卵を塩漬けしたものだとのこと。

前者を「マダラコ」「マコ」、後者を「スケコ」と呼び分けることもあるようです。

いずれも東北地方や北陸、北海道などではなじみ深い食材らしく、探すと日常的に食べられているレシピに行き当たるのですが、中国地方から関東に移り住んだ私にとっては距離をつめるタイミングがなかった存在。

では、ここから多くのレシピを調べて、練習の道筋をつけてまいりましょう。

 

立ちはだかる、魚介類生食あるある

まず目につくレシピが「煮つけ」。
甘辛生姜汁で煮つけたものを「懐かしの味」としているレシピを多く見かけます。

これは、調理工程も味もなんとなく想像できる。

その昔、旅で訪れた新潟の市場で見かけ、我慢できずに持ち帰った蛸の卵も、同じように「煮つけて食べよ」とのレシピが多かったのを思い出します。で、そうしておいしくいただいた記憶。

蛸の卵。旅先から生鮮食品を持ち帰る癖はいつから…

 

で、他にレシピは…と探し続けていると、「塩漬け」と「醤油漬け」という加工法を発見。
なるほど、生いくらと同じように考えればいいのか。

それらの加工法に対するレシピ別の差異を見つけるべく深堀っていると、「あーそうか、たしかに…」とぶち当たる、壁がごとき単語が。

そう、「アニサキス」
魚介類を生食しようとすると、まあまあの頻度で立ちはだかる障害。

目視確認ができるとはいうものの、今回は生の内臓なので心配です。

「-20度以下で24時間以上冷凍」「芯温-8度まで凍らせる」と死滅するとの情報を得たので、マイ冷蔵庫の冷凍スペックを確認します。
「最低温度=-22度」と確認してまずは胸をなでおろし、とはいえ家庭用なので「開け閉めを極力避け、48時間以上冷凍する」という方法をとることとしました。
(ここら辺は、どうぞ自己責任で)

というわけで、3分割して「煮つけ」「醤油漬け」「塩漬け」の3種を作ることに決定。

 

■真鱈子の煮つけ

煮つけに関しては、「煮てから輪切り」「輪切りにしてから煮る」の2パターンを発見。
「煮てから…」だと、大きくて火が通るのに時間がかかりそうなのと、「輪切りにしてから…」の方が花のように開いて見た目によいので、切ってから煮るパターンでいくことに。

まずは、臭みを取るために湯引きをします。
2㎝くらいの輪切りにし、塩を入れた湯でさっと茹でてざるにあげます。

この時点で黒い皮が内側に入る予定だったのですが、まだ見えてしまっている。
煮ているうちに、くるりと入ってくれるかな。

また、直径が大きい筒状なので、崩れて粒になるものが多く、もったいないので粒も一緒に煮ることにしました。

醤油とみりん、酒、砂糖を加えた、いわゆる煮物の汁にスライスした生姜を入れて沸騰させます。
弱火にしたら、湯引きした真鱈子を入れて落としぶたを。時々返しながら、煮ていきます。

火が通り、全体に色づいたら火を止め、そのまま冷ましてできあがり。

針生姜をのせて。

 

味は想像通り、ごはんもお酒もすすむ感じの煮つけの味です。
ただ、卵の味を思ったよりも強く感じて、「もうやめなきゃ(塩分が気になる)」と思いつつ箸がすすんで困りました。
郷土の味として愛され続けるのが、とてもよくわかる1品。

 

■真鱈子の醤油漬け

生で加工するにあたり、アニサキス対策として冷凍工程を入れることにしたので「冷凍を先にするか、後にするか」問題が発生しました。
初めての食材なので、冷凍がどれくらい食感に影響するかも分からず…。

「醤油漬け」と「塩漬け」の2パターン作ってみることにしたので、
醤油漬け=冷凍してから加工
塩漬け=加工してから冷凍
と分けてみることに。

同条件じゃないけど、食感への影響が推測できるといいな。

さて「醤油漬け」です。

冷凍する前に臭みを取るため、全体に多めの塩をふって冷蔵庫に1時間置き、洗い流してから水気をとって冷凍庫へ。
2日後、冷蔵庫に移して解凍し、皮から卵を取り出します。
醤油とみりん、酒を一度煮切って冷ました漬け汁を加えてなじませ、再び冷蔵庫へ。

2日置いたものが、こちらです。↓

卵が汁を吸って、いい感じ。

食べてみると、いくらほどではないものの、普段食べるたらこよりは卵黄感を感じます。
こりゃいいぞ、と、冷奴のトッピングにしていただきます。

なぜかかつお出汁のような風味も感じておいしく、結局トッピングを増やしながらいただきました。

 

 

■真鱈子の塩漬け

塩漬けは「後から冷凍」パターンとしたので、まずは塩漬け。

表面のぬめりを洗い流し、水気を取ります。
真鱈子の重さの10%の塩を全体にまぶして、キッチンペーパーでぐるり。

10%って結構な量。

 

冷蔵庫に一晩おいたらペーパーを変えて、さらに3日置きます。
思いのほか、時間がかかる。

3日置いたら、皮から卵を取り出し、表面に貼りつけるようにラップをして冷凍庫へ。48時間、冷凍します。
時間、かかる。

塩漬け3日後の状態。しっかり脱水しているのがわかる。

 

冷凍が終わったら冷蔵庫に移し、解凍します。ここまで長かったー!

食べてみると「水分量少なめのたらこ」といった感じ。おいしい。
醤油漬けと同様に、かつおっぽい風味を感じます。

そんな初手作りたらこを、こんな料理に活用してみました。

 

【真鱈子カルボナーラ】

真鱈子には、卵黄とベーコンの役割を担ってもらいます。

全卵とおろしたチーズをよく混ぜたところに真鱈子を加えて、ソースをつくっておきます。
フライパンに油をひいて火をつけ、茹であがったパスタを入れたら一旦火を止めて作っておいたソースを流し込みます。すぐによく混ぜ、極弱火をつけたら、とろみがつくまで引き続き混ぜ続けます。
最後にレモン汁少々を加えてひと混ぜし、皿に盛ったら、おろしたチーズ、黒こしょう、真鱈子をトッピング。

真鱈子の旨みを存分に楽しめるカルボナーラになりました。
こうやって食べると、からすみっぽさも感じるな。

醤油漬けと塩漬け、どちらも冷凍工程の影響は感じることなく、おいしくいただきました。

 

冬食材練習帖ー後記ー

真鱈子は、普段食べているたらことはまた違ったおいしさでした。かつおっぽさというか、からすみっぽさというか。
長年の謎が解けた感覚。

今のご時世、いろんな食べものがすごいスピードで流行っては消えていきますが、一方で、その土地で取れるものを、無駄なくおいしく食べようと工夫を重ねてきた先人たちがいたということ、そしてそんな料理が残り続けているということを、あらためて認識できて心強く思えました。

他にもまだたくさんある未体験の食文化を、もっと知っていきたいなぁ。