災害時の仏像応急修復ボランティア
先日、能登半島で大きな地震がありました。昨今は、各地で、地震や洪水で、文化財に被害が出ることが多くなっています。私のところでは、災害時には、「地域歴史文化財保存支援」という工房とは別の組織を作って、そこにご寄付を募って、交通費を出してもらって、私がボランティアで応急処置を行うという活動を行ってきました。仏像を安全に移動したり、とれてしまった、手とか足などの部材を現地で接着するという活動です。これまで様々な災害地に行って活動してきました。
各地での活動内容はこちらから(地域歴史文化財保存支援HP)
http://hozon.syuuhuku.com/page/saigai.html
ご依頼のない中で、訪ねて行って「仏像修復家です」と言っても、とても怪しい人なので、ご依頼がないと、なかなか動くことができない活動です。お声をかけていただければと思います。それまでにやりとりのある自治体の教育委員会さんからのご依頼やご紹介で動くことが多く、指定文化財への処置が多かったですが、本当は未指定の御像にこそ手を差し伸べたいところでもあります。
お仏像が災害被害にあったときに、気をつけること
まずは、身の安全を確保したうえで、
・余震に備え、立像は毛布の上に倒しておく。(打ち傷が一番修復しにくいためです)
・雨や雨漏りには当てないようにする。(金箔や彩色は水に弱いためです)
・外れてしまった部材や折れてしまった部材はどんなに小さいものでもとっておき、無くさないようにまとめておく。仏像の部品らしきものは残らず全部とっておいて下さい。
(部材がなくなってしまうと、修復が複雑になってしまうためです。落ちた壁の片づけの際に一緒に捨ててしまわないように気をつけて下さい。)
・御像が濡れてしまった場合には、早めに陰干しで乾かして下さい。カビが生えてしまう恐れがあります。(直射日光や風に当てますと木が割れてしまう場合があるので注意)
・破損しても、塗り直し修理はしない方がいいです。(御像の積み重ねてきた歴史が損なわれ、新しい別の御像になってしまうからです)
・自治体の文化財指定を受けていなくても、全てが歴史のある貴重な御仏像です。
・修復の際には専門家にご相談下さい。
地域に残された御仏像をしっかり守っていきたいものです。
平常時でも危機はある
一方で昨今は、地域の過疎化や信仰観の変化によって、地域のお堂の仏像が危機にさらされている場面に出会うこともあります。そうしたところでは、一日雇っていただいて、日当と交通費をご負担いただいて、応急処置を行います。一日ありますと、結構色々なことができます。処置後は、簡単に報告書を作って、御像の製作年代や構造技法についても報告します。
本当はしっかり修復をして、次の世代に繋げたいところですが、なかなか完全に修復するまではできないことも多いので、とりあえずバラバラになっているのを組み立てておくだけで、なんとか次の世代につないでもらおうという活動です。バラバラのままですと、部材が無くなってしまう恐れもありますし、尊像としての威厳も損なわれてしまいます。壊れていたとしても、地域の皆さんに大事にしていただけていれば、御像は、保存されていきます。
こうやって少しずつでも、次の世代に地域の仏像を残していきたいと日々活動しています。
地域を見回せば、古くから皆さんを見守っている仏像・神像が残されています。是非、日ごろから気にかけておいてください。