史佳

新潟出身の三味線プレイヤー。9歳より津軽三味線の師匠であり母でもある高橋竹育より三味線を習い始め 2000年よりプロ活動をスタート。新潟を拠点に国内外で演奏活動を行ってきた。古典を大切なベースとしながらも、伝統芸能の枠を超えた新しいニッポンの音楽を目指し、現在、ニューヨークを拠点に移し三味線芸術の新しい境地を開拓している。 YouTube公式チャンネル :https://www.youtube.com/channel/UCDcEsCsEsKHs6Oyv-i83Nfw

ハレの日には無冠帝、そして新たな一年へ___。

あと、数日で2024年の幕開けだ。
現代は、人生100歳時代とも称される。
私は、来年50歳を迎え、その折り返し地点に立つ。

菊水酒造の数々の美味しい日本酒の中でも、特にその誕生ストーリーや独自の哲学スタイルも含め、
私が愛してやまないのは、吟醸酒『無冠帝』である。
この『無冠帝』を飲んでいると、ふと三味線を初めて手にした日のことが蘇ってきた。

40年前のある日、風邪で小学校を休んだのだが、夕方になり体調が回復した。
その時に、母に三味線を触ってみたいと何気なく言ったようだ。
初めて手にした三味線であったが、触ってみると、ものの数時間で、一曲弾けるようになっていた。

私の三味線人生の始まりだった。
その後、人生の紆余曲折を経て、一旦離れた三味線人生に再び戻り、今を迎えている。
その運命は、9歳の時に既に決まっていたのだろう。

この40年間、「猪突猛進」は私のためにあったような言葉である。
特に演奏家としての20数年はとにかく前へ前へ、突き進んできた。
やると決めたことは決して諦めず、必ず実現させてきた。
そうして見てきた景色は、どれも素晴らしいものであった。
でもその目標を達成すると、その喜びに浸る時間は、ほんの僅かである。

次の壁がすぐに立ちはだかるのだ。

孤独と向き合いながら、日々三味線を弾き続けてきた。
その努力は絶対に私を裏切ることはなかった。
いつも素晴らしい音を奏でてくれることに感謝し、
これからも三味線人生と向き合って生きていくことを改めて実感している。

その中でも、50歳からの10年をどのように活動していくかは重要である。
今までと同じやり方では、この新時代を生き抜いていくことは難しいと感じている。
引き継ぐべき伝統を踏襲しながら、新しいことを生み出すことが必要なのである。
目立つことや突拍子もないことをやるのは簡単であるが、すぐに廃れていってしまう。
伝統と革新を融合させた芸術の手法を、どのようなバランスで、どのように魅せていくのかを追求することが、
私に与えられた使命なのである。

五十にして天命を知る・・。

DXの加速とともに、時代の潮流に遅れず、進化していく覚悟も必要である。
この変化の中には、ますます世界と繋がりを広げるチャンスであると認識すべきである。
シカゴ在住の人が、私のYouTubeを見つけ、わざわざ新潟まで会いにきてくれたこともあった。
これは、デジタル時代ならではのつながりの一例であり、これからも新しい経験や出会いを通じて、
世界とのつながりを深めていきたい。

夢中になれるモノがあって幸せだ。苦しいと感じるモノがあって幸せだ。

『無冠帝』を飲みながら色々な思いに浸る時間・・・
1年の最後を締め括るこの日が、私にとって、とても大切な“ハレの日”なのである。

来年も自分らしく、地位や名誉にこだわらず高き志を持つ“無冠の帝王”___。
その歩を進めたいと思う。