hatao

ケルト&北欧の笛奏者、音楽教師、音楽教材著者、楽器店経営者。 ハープと笛のhttp://hataonami.com、ケルトの笛屋さんhttp://celtnofue.com 演奏、教育、普及で音楽を広める。18年京都烏丸錦に、19年東京都ひばりヶ丘に日本初ケルト音楽専門の楽器店を開店。En한中 3か国語学習中。

趣味で副業を。「Patreon」のサポーターが月収1万円を超えたのでシェア

こんにちは! ケルトの笛奏者で、ケルト音楽専門の楽器店「ケルトの笛屋さん」を経営しているhataoです。この連載では、スモールビジネスを営む私が起業やビジネスについてアイデアと経験をみなさんとシェアしています。

今回は、副業として趣味を仕事にしたいと考えている人へ向けて、私が行なっている趣味活動のマネタイズについてお話します。もう2年近く前になるのですが、本誌で「アイルランド音楽の教則動画シリーズをYouTubeで始めました」という記事を掲載しました。その後についてお話しをします。

アイルランド音楽の教則動画シリーズをYouTubeで始めました
https://brew-by.com/18803

YouTubeへの投稿を地道に続けて広告収入を得る

あの頃― 2021年はコロナ禍でコンサートの機会が減り、音楽家は誰もが自分の音楽を聴いてもらう機会を作ろうと必死でした。私もコンサートが無いため練習へのモチベーションが減り、自分が音楽家であることすら忘れてしまうそうに感じていました。そこで、当時すでに乗り遅れていた感のあるYouTubeにアイルランド音楽の曲を毎日投稿する活動を始めました。

hatao’s Irish Tune of the Day

あれから2年経ち、ずいぶんと世の中の状況は変わりました。コロナの規制は解除され、コンサートは以前と同じように開催されるようになりました。今やオンライン・コンサートをする人は珍しいくらいです。その間も、そして今も私は、毎日とは言いませんが、YouTubeへの投稿を続けてきました。その曲数は300曲に達しています。またライブ配信も時々していました。この活動開始当時のチャンネル登録者数は4000人程度だったのですが、今は7000人に迫ろうとしており、日々微増しています。

私が投稿しているジャンルはアイルランド音楽や北欧の伝統音楽というマイナージャンルです。コロナ禍の間、本場アイルランドの一流プロの多くの音楽家が同様に毎日投稿の試みをしていたのですが、それでも1つの動画が1000回再生も達しない程度の小さな市場です。私など海外ではほぼ無名。それでも各動画は100~200回程度再生されており、コメントのほとんどは外国人です。変わり映えのしない無伴奏のフルート演奏の動画なので、再生回数は全く期待していませんが、着実に増えていくチャンネル登録者数と、たまに付く視聴者からの賛辞のコメントを励みに投稿を続けています。この投稿による広告収入は月1万円いくかどうかというところです。

メディアミックスとYouTube活動の副産物 

私の動画は1本5分程度の短いものですが、1分くらいにカットしたダイジェスト動画を毎回作ってFacebook, Twitter (現X)、Instragramに同じものを投稿して、YouTubeに誘導するようにしています。これらは誘導が目的なので、毎日淡々と投稿し続けていますが、これらのフォロワーも副次効果的に増えているように思います。

この動画活動そのもので私が注目されたり仕事依頼につながるなど短期間で何か変化があるとは期待していませんが、このようなレッスン動画は古びないので私が年を取っても見られる価値はあると考えています。

ほかにYouTube活動を行っている副次的な効果として、基本的に毎日動画を撮影しているので、フルートの良い練習になっているということです。私は気分屋で、楽器店の仕事が忙しかったり気乗りしなければ2、3日まったくフルートを吹かないこともままあったのですが、動画撮影を良い理由に毎日30分は最低でも吹くようになりました。おかげで調子が良くなったと感じています。

撮影は5分間の動画を撮るためにノーカット、編集なしです。ささいなミスでも最初からやり直しをし、気に入らなければ時間の許す限り撮り直してから投稿しています。これはライブと同じ緊張感を自宅で作ることができるので、とても良い練習になっています。

Patreonでサポーターを募る

日本ではあまり知られていないのですが、アーティスト活動を支援するサービスPatreon (ペイトリオン)という英語のサービスがあります。比較として、クラウドファンディングは何か1つの目的のために資金調達をするためのものですが、このPatreonはポッドキャストやYouTubeなどを利用して無料でコンテンツ・サービスを提供している人や、音楽など芸術活動をする人の支援者を広く集めるためのものです。私は、愛聴している語学ポッドキャストの番組で支援者を呼びかけていたためこのサービスの存在を知りました。支援者は毎月一定額をクレジットカードから支払い、たいていは何らかの特典、たとえばサポーターだけが聴ける特別番組、ラジオの文字起こし、マンツーマンのレッスンやカウンセリング、グッズだったりと何らかのファンサービスを受け取ります。

私はこのPatreonを月$5、$10、$20の3つのタイプで用意して、YouTube動画で支援者を募集しています。

Patreonのプラットフォームは英語ですが、日本のアイルランド音楽の市場はあまりにも小さいので最初から日本人が支援してくれることは期待せず、Patreonにはすべて英語で投稿しています。支援者の特典は動画の音声部分mp3と楽譜ファイルのデータのダウンロード、投稿する曲のリクエスト権です。支援者は増減を繰り返しながらも少しずつ増え続けており、現在14名の方が合計$86、13,000円程度を毎月支援してくれています。なんだ、その程度かと思われるかもしれませんが、年収15万円増と考えると、見過ごせない金額です。動画の再生数が少なくても、こうして支援してくれている人がいることで、動画投稿を続けるモチベーションを保つことができます。

データを自社サイトでも販売

Patreonでサポーター向けに用意した楽譜と音声mp3のデータは、50曲分ずつまとめて自社「ケルトの笛屋さん」でデータ販売をしています。こちらは50曲1,000円で、たまに売れる程度なのですが、データというのは在庫リスクがなく、劣化もしないので永遠に売り続けることができるストック収入です。今後、曲数がまとまったら同じデータを使って書籍やグッズにすることも考えています。

趣味をマネタイズする秘訣は「仕組み化」

今回は、私が趣味のアイルランド音楽の練習をマネタイズする方法を公開しました。秘訣は、動画を作るという一つのタスクに対して、複数のメディアとサービスを組み合わせてリアクションが何倍にも増幅する仕組みを作るということです。また、ストックしたデータはレッスン教材に使ったり、以後の出版に使ったりと、何度でも活用することができます。

毎日投稿したり、各種プラットフォームやサービスをメンテナンスするのはマメな性格でないとできないかとは思うのですが、もしみなさんが自分の得意なことや趣味を活かした副業をしたいとお考えであれば、参考になりましたら幸いです。それではまた次回!