7月9日、菊水酒造本社のある新発田市の生涯学習センターで開催したライブ
「pp/ff emotion 静寂と熱狂の共鳴」は、梅雨空を吹き飛ばす盛り上がりを見せた。
私が敬愛するジャズピアニストの秋田慎治さんをゲストに迎え、
三味線とピアノのコラボレーションステージである。
三味線とピアノのそれぞれの特色が光り、そのコントラストを存分に堪能してもらえる構成にした。
第一部では、お互いのソロ演奏を30分ずつ披露し、
第二部では民謡や現代曲、オリジナル曲でコラボレーションした。
今回の目玉は何といっても、第二部で演奏する現代曲『 Despacito(ディスパシート)』である。
この曲は、プエルトリコ出身の歌手ルイス・フォンシーがリリースし、
YouTubeで何億回も再生されている人気曲である。
ジャスティンビーバーがカバーしたことでさらに話題になった。
多くの人が一度は聴いたことがあるだろう。
Despacito の日本語訳は”ゆっくりと”___。
その歌詞の内容はとても官能的である。
若い時には演奏できなかったであろうこうした色気のある曲に、まさに満を辞して挑んだ。
私は三味線を40年演奏してきたが、新しい曲を本番でやるときほど、緊張することはない。
何万回と弾いてきた古典の曲ならば、手が勝手に動く感覚で弾けるのだが、
演奏回数が浅い曲はそうはいかないのである。
本番直前まで、控室で何度も練習を繰り返す。
そして、いよいよ第二部が始まった。
民謡の中でも最もピアニッシモな曲、『十三の砂山』からである。
三味線とピアノで、絶妙なピアニッシモ合戦となった。
そして、もうすぐ曲がおわり、はかない音で終わろうとしていたまさにその瞬間!
人生初のハプニング発生である。
なんと、小さい虫が私の鼻の中に侵入したのだ。
鼻の中で虫が終始動いているが、何とか無心で最後まで弾ききった。
曲を終えた瞬間、思わず笑いがこみあげてきた。
お客様に緊急事態を宣言して、ポケットティッシュをもらった。
目と鼻をきれいにふき取り、気を取り直したところで、いよいよ『ディスパシート』だ。
虫の事件があったことで、無駄な緊張もとれ、 スムーズに進んだ。
色気溢れる慎治さんのピアノとのコラボレーションが実現し、
とても官能的な演奏となった。
お客様も新しいナンバーの曲を楽しんでくれたようだった。
ライブラストでは、ヴァイオリンの庄司愛さんも参加し、生バンド形式で演奏した。
アンコールは、オリジナル曲「桃花鳥」。
菊水のアロハシャツをみんなで着て、演奏した。
西洋の楽器と東洋の楽器が見事なハーモニーを奏で、会場は総立ちとなった。
終演後のロビーで、多くのお客様から励ましの言葉をいただいた。
今回のライブが大きな収穫となり、この新しい編成で全国ツアーを回りたいという目標も見えた。
さらに現代曲を取り入れてレパートリーを増やすことを考えている。
50代に向けて、色気ある三味線の演奏にも挑戦していきたい。
どんなハプニングがあろうと、焦らず、ゆっくりと___。